議事録
衆議院決算行政監視委員会参考人陳述報告書
公営宿泊施設等対策本部長 針谷 了
日 時 | 平成11年2月24日(水)午前10時~12時 |
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場 所 | 衆議院第17委員会室 |
案 件 | 歳入歳出の実況に関する件及び行政監視の関する件 (公的宿泊施設に関する問題) |
参考人 | 旅館三団体協議会公営宿泊施設等対策本部長 針谷 了 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 奥野正寛氏 立教大学教授・観光学部長・観光学研究科委員長 岡本伸之氏 |
- 開会
- 10:00-10:03 原田委員長より開会挨拶と参考人に対するねぎらい。
- 参考人陳述
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10:03-10:15 針谷 了 陳述 持ち時間10分
10:15-10:30 奥野正寛教授陳述 持ち時間10分
10:30-10:45 岡本伸之教授陳述 持ち時間10分
- 参考人に対する質疑
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10:45-11:05 自民党 倉成正和先生 持ち時間20分
11:05-11:25 民主党 石井紘基先生 持ち時間20分
11:25-11:35 明 改 赤羽一嘉先生 持ち時間15分
11:35-11:45 自由党 米津等史先生 持ち時間15分
11:45-11:50 共産党 辻 第一先生 持ち時間10分
11:50-11:55 社民党 保坂展人先生 持ち時間10分
- 委員長挨拶
- 11:55-11:58 原田昇左右委員長より参考人に対するねぎらいと閉会挨拶
針谷陳述内容
資料を38種類44枚用意し、資料の順に説明しました。以下はその要旨です。
役割は終わりました。
不公平な競争で民業を圧迫しています。公平な競争をさせて下さい。
- 旅館軒数が公営宿泊施設の影響等で激減しています。
(厚生省・会計検査院資料・湯田温泉・雄琴温泉) - 料金が著しく低く民業を圧迫しています。
(交通公社資料・国観連資料・秋田県サンルーラル大潟のチラシ) - 無料送迎までして民業を圧迫しています。
(勿来の関荘・国民年金センターいわき・かんぽ網走の例) - コンパニオン付のセットプラン等設立目的と乖離がある営業をし、民業を圧迫しています。(沼尻勤労者保養センターリゾートインぼなりのチラシ)
- コンパニオンの手配をし、又持ち込みも認めています。
(山形県厚生年金休暇センター見積書・群馬県厚生年金会館の領収書) - 飲み放題・カラオケ付・二次会付の宴会パックまで企画し、民業を圧迫しています。
(かんぽ十勝川のパンフレット) - 進出する際、地元旅館組合との事前調整はほとんどありません。
(会計検査院資料) - 民間業者と対抗する為、員外利用の確認をほとんどせず、被保険者の料金を適用しています。会計検査院の検査でも指摘があります。(会計検査院資料)
税金等公的資金の無駄遣いです。年金負担等の増大を招きます。
- 莫大な公的資金が使われています。
(会計検査院資料・公的資金支出推定額23兆6億円の根拠) - 会計検査院の公的宿泊施設に関する検査結果でも、赤字施設廃止の検討、閣議決定の遵守を示唆しています。又閣議決定対象外施設についても財政を考慮する事を求め、幅広く議論すべきであると結んでいます。(会計検査院資料)
- 市区町村から莫大な補助金が支出されています。
(前橋市勤労者福祉センターの決算書・倉敷国民宿舎の例) - 年金福祉事業団が展開した『グリーンピア』に対する2,000億円は返ってきません。そして、誰もその責任をとっていません。簡易保険特別会計が将来破綻した場合、税金等の公的資金の投入あるいは給付の減額となり、いずれにしても国民の財産が減少します。郵政省の担当部局の責任者はその責任をとるのでしょうか?(行政監察資料)
- 本年10月に発足する『雇用・能力開発機構』が廃止・譲渡まで管理する公営宿泊施設は雇用保険料引上予定の2001年までに、その業務を完了し負担を無くさなければ、国民は納得しません。(日経新聞記事)
- 第三セクターで管理運営されている公営宿泊施設の経営がずさんです。
(岡山県・レスパール藤ケ鳴に関する中国新聞の記事) - 利用者はいらないと言っています。(仙台・勾当台会館アンケート結果記事)
- 殆どの施設が公益法人に業務を委託しており、天下りの温床となっています。(会計検査院資料)
- 県庁職員が県費により公営宿泊施設で働いています。間接的な税金の無駄遣いです。
簡易保険福祉事業団は会計検査院に資料を提出せず、衆議院決算行政監視委員会の意図を理解していません。
- 簡易保険福祉事業団が会計検査院に資料を提出したものは『保養センター』と『会館』の2類型のみです。宿泊施設有する『加入者ホーム』『総合検診センター』『総合レクセンター』の資料は閣議決定の対象ではないとして提出していません。特に総合レクセンターは現在稼働の3施設とも赤字であり、その為の提出しなかったと思われます。(会計検査院・行政監察資料)
- 簡易保険福祉事業団は閣議決定の趣旨を理解せず、新設・増改築を積極的に展開しています。(行政監察資料・簡保新設計画資料)
- 昭和59年12月29日の閣議決定では『宿泊施設等』の新設を禁止しており、総合レクセンター等は明らかに宿泊主体施設であり、禁止の対象となります。
郵政省簡易保険局加入者福祉課の武田五郎補佐は『宿泊は出来ても宿泊施設ではない』と答えています。閣議決定を無視した暴挙です。
(会計検査院・守山総合レクセンターの概要資料) - 『総合レクセンター』は完成すれば通称を『かんぽの郷○○』として運営し、<和室研修室>は完成後<大広間>となります。(峰山総合レクセンターのパンフレット)
- 行政監察局は赤字施設の新設を禁止していますが、既存の3施設とも赤字である総合レクセンターをさらに新設しようとしています。(行政監察資料)
- 保養センターについても総数は増加していませんが、建て替えを行い、大きくて豪華な施設になっています。又、施設数は同じでも客室数・定員が増加し、民業を圧迫しています(保養センター定員数の推移資料・かんぽ一関新旧パンフレット)
- 京都二条駅前に建設予定の<新型健康増進施設=客室135室のホテル>のように次々と新しい類型を作り出しています。健康増進施設という名称を隠れ蓑にして135室もの客室をつくり、京都のシティーホテル全てが赤字といわれているなか、脅威となっています。
(京都新型健康増進施設基本計画の概要資料) - 簡保福祉事業団に対し、現在まで建設資金に相当する出資金が3,855億円支出されています。又、人件費に等に充当される交付金として2,277億円(62年度から平成8年度までの10年間)支出されています。これらは簡易保険の財政を悪化させます。(行政監察資料)
- 123施設中、交付金を除けば105施設が赤字(赤字率85%)というひどい状態です。
(行政監察資料) - 『加入者ホーム』という名称にしていますが、豪華な施設で事実上員外利用の制限がありません。(熱海簡保加入者ホームパンフレット)
種々の意見に対して
- 公営宿泊施設を建設することは過疎地対策になる
- 廃止すれば公営宿泊施設で働く人の雇用問題が発生する
- すべての施設に反対するのか
- 利用者の支持があるではないか
- 公務員にも福祉施設は必要だ
以上のよく出る質問に予め我々の考えを記した文書を資料として提出しておきました。
資料に番号を打っておくように頼んだのですが、打っていなくて先生方の一人から判らないとのヤジが飛びました。その影響で上記の約3分の2まで済んだところで時間を3分ほどオーバーしていた為、時間をオーバーして先生方の印象が悪くなることを懸念し、続行を断念しました。
奥野正寛参考人陳述
- 官民役割分担の3つの原則
- 『民間で出来るものは民間に委ねる』ことで行政のスリム化を。
- 『国民本位の効率的な(また国民の望む)行政を』行うことで行政の効率化を。
- 『納税者である国民、資金負担者である被保険者に事業や行政の内容を明らかに』することで、国民に対する説明責任(アカウンビリティ)を。
- 公的宿泊施設についても企業会計を取り入れるべきである。
- 民営化による競争圧力・透明性の確保・公益法人や天下りの排除
一部の人だけが低料金を利用している。
どうしても必要なら、民間施設で割引が受けられるクーポンを税負担など民間業者とイコール・フッティング(民営化) - スリム化
黒字施設なら、民間で出来る→民営化
赤字施設は廃止すべきだ。
補助が必要なら、金銭的補助で機会均等と透明性を総じて、この種の事業を官が行うことは、非効率や不透明性あるいは不平等を高め、天下り先を作り、民業の圧迫をもたらすだけで、国民や被保険者などにプラスがあると考え難い。
以上のような内容でした。非常に明快で、我々の主張と全く同じであり、意を強くしました。出席した議員の先生方に大きく影響したと思います。
ソーシアルツーリズムの話
外国の現状 アメリカは全くなし。欧州は官民の役割分担が明確
日本ほど多彩な公的宿泊施設がある国は珍しい(縦割り行政の産物)
民間企業だけでは『すべての人が旅する権利』を行使できない。
全般的には抑制するべき。青少年や家族の限定的な施設は官が行うべきだ。
現状の公営宿泊施設には否定的な見解を示されたが、極限られた対象には公営が必要だとの考えのようでした。
参考人に対する質疑
- 自民党 倉成正和先生 持ち時間20分
- 民主党 石井紘基先生 持ち時間20分
- 公明党 赤羽一嘉先生 持ち時間15分
- 自由党 米津等史先生 持ち時間15分
- 共産党 辻 第一先生 持ち時間10分
- 社民党 保坂展人先生 持ち時間10分
どう答えるべきかを懸命に考えていましたので、ひとつひとつのくわしい内容はあまり憶えていませんが、意地の悪い質問は全くなく全先生非常に好意的でした。
質問する為に私の資料(前日の14時提出)をよく読んで頂いていたようで、膨大な資料の提出は大成功でした。
特にコンパニオン等のチラシや領収書、無料送迎、サンルーラル大潟の3,200円のチラシ等が効いたようです。『こんなことまでやっとるのか!』という声が聞こえました。
如何に旅館が不公平な競争で苦しんでいるか。税金の無駄遣いか。如何に官が誤魔化しているか等々、我々の主張のポイントを良く理解し、その線での質問が殆どであったように思います。
陳述=60点 質疑=80点 提出資料=95点 と自己評価しています。
議事録がしばらくしたら出るようですので必要でしたらお申し付け下さい。
委員会中、山本一太先生が委員の後ろの席に控えて頂き、ヤジが出た際もすぐさま応酬して頂きました。先生のいつも変わらぬ誠意と行動に感謝しております。
資料の収集に当たっては、山口県の松田さん、秋田の安田さん、福島の草野さん、滋賀の川村さん、福島の山田さん、山形の小関さん、群馬の千木良さん、岡山の藤原さん、宮城の旅館組合、岩手の菅原さん、大分の西田さん等々全国のメンバーから速達や宅急便でお送りいただき、間に合うことが出来ました。京都の北原さん、石川の吉田さん、中国新聞の登地さんから頂いた資料も使いました。そして上記の方々に協力して多くの方々が資料収集の為に動いて頂きました。有り難さがつくづくと身にしみました。
前日の資料整理には勝田さん井上さん西岡さん日吉さん等事務局の多くの方にお手伝い頂きました。清沢さんには、先生方の質問内容を事前に教えてもらう等、いつもながらの気の利いた活躍で大いに助かりました。石川専務にも種々御指導頂きました。桑原会長には笑顔で励まして頂きました。
又、前日の夜には工藤青年部長に原稿をチェックしてもらい助かりました。
当日も又清沢さんと工藤さんに委員会室まで同行してもらい、心強く感じました。
本当に良い体験をさせて頂きました。言い足らない点も多々有り、忸怩たるものもありますが、多くの方々の協力と励ましにより何とか役目を全う出来たのではと思っております。有り難うございました。
これを契機として、より一層攻勢を強め、3月16日の『ストップ・ザ公営宿泊施設』と併せ、成果を勝ち取ってゆきたいと思います。
今後ともよろしくお願い申しあげます。