議事録
衆議院決算行政監視委員会会議録
平成11年2月24日(針谷了本部長参考人陳述)
午前十時開議
原田委員長
これより会議を開きます。
歳入歳出の実況に関する件及び行政監視に関する件、特に、公的宿泊施設に関する問題について調査を進めます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として旅館三団体協議会公営宿泊施設等対策本部長針谷了君、東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授奥野正寛君及び立教大学教授・観光学部長、観光学研究科委員長岡本伸之君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、公的宿泊施設に関する問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいとお願い申し上げる次第であります。次に、議事の順序について申し上げます。まず、針谷参考人、奥野参考人、岡本参考人の順序で、お一人十分程度御意見をお述べいただきたいと思います。次に、委員からの質疑に対しましてお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは、まず針谷参考人にお願いいたします。
針谷参考人
本日は、機会をお与えいただきまして、まことにありがとうございます。また、公的宿泊施設問題をお取り上げいただきまして、感謝申し上げます。
私は、旅館三団体協議会公営宿泊施設等対策本部長の針谷でございます。滋賀県雄琴温泉で湯元館という旅館を経営しております。旅館業界を代表いたしまして、陳述させていただきます。
六枚つづり「公営宿泊施設の現状と問題点」という二枚目のペーパーと、その後に続きます資料によって進めさせていただきたいというふうに思っております。まず、六ページと書いた次の、資料一をごらんください。「運営のあり方についての調査検討」という部分でございます。我々が最初に主張することは、もう公営宿泊施設の役割は終わったということでございます。民間の施設が質、量、価格ともに充実してきました、もう我々にお任せいただきたいと。資料一のこの委員会が命じていただきました会計検査院の結果でも、時代が変わって必要性がなくなったとしております。
我々が二番目に主張していますのは、不公平な競争で民業を圧迫しているという事実でございます。
次の資料をごらんください。戦後一貫してふえ続けました施設数が、昭和五十五年をピークとしまして減少に転じております。明らかに公営宿泊施設が民業を圧迫し出したというのがこれです。旅館業界もこのころから反対運動をし出しました。
その次と次の資料をごらんいただきたいと思います。旅館件数が減り出した昭和五十五年以降も、公営宿泊施設は施設数、客室数、定員ともに伸びております。
その次の資料をごらんください。資料四と書いた部分でございます。山口県の湯田温泉は、公営宿泊施設が林立する温泉地でございます。旅館が次第に公営宿泊施設に駆逐されている実態がおわかりになると思います。
その次の資料をごらんください。手前どもの雄琴温泉でございます。
原田委員長
何ページですか。
針谷参考人
資料五と書いた部分でございます。一番上に「資料五 滋賀県雄琴温泉 公営宿泊施設の進出による旅館数の減少」というふうに書いた部分がございます。中小旅館が倒産をして、また廃業して、どんどん旅館が少なくなっている現状がおわかりだと思います。
次の資料をごらんください。資料六と書いたものでございます。公営宿泊施設と民間の宿泊施設では、約倍の料金格差があります。民間では当然支出している費用が公的資金で賄えるために安くできるのです。そして、価格志向の強いお客様は公営宿泊施設を選択して、民間の施設が圧迫されるということになります。
次の資料をごらんください。秋田県の大潟村のサンルーラル大潟という施設です。三千二百円、送迎つきという、もうめちゃくちゃな料金で、民間の経営努力を超えております。
その次の資料をごらんください。これは、勿来の関荘というところです。丸印をしました。マイクロバスによる送迎をしております。
その次の資料をごらんください。ここもマイクロバスの送迎をしております。
その次の資料をごらんください。かんぽの宿網走、これも、送迎バスでお迎えに上がりますと、堂々とチラシにうたっております。
その次の資料をごらんください。コンパニオンつきのセットプランです。コンパニオンまで売り込んでいる現状がおわかりだと思います。
その次の資料をごらんください。これは、ほとんどの施設がコンパニオンを、セットまではしないですけれども、コンパニオンを呼ぶことができます。形式上は、資料の厚生年金休暇センターのような例、次の資料ですね、持ち込みの形式をとるところやいろいろありますけれども、コンパニオンが呼べない施設というのはほとんどございません。
その次の資料をごらんください。これは、かんぽ十勝川というところです。飲み放題、カラオケつき、二次会つきということでございます。公営宿泊施設がどんちゃん騒ぎをするための施設なのでしょうか。
その次の資料をごらんください。ほとんどの公営宿泊施設が、進出する前に地元旅館組合と調整をすることということになっております。また、郵政省の進出の条件には、地元旅館組合の反対がないこととされています。しかしながら、実際には事前に相談があることはほとんどありません。建築寸前になって判明するのです。そして、反対運動をしているにもかかわらず、その建設を強行しようとしています。石川県の和倉温泉でも、今反対運動の最中に強行しようとしています。
その次の資料をごらんください。(発言する者あり)順番に資料番号を打つようにとお願いしたんですけれども、ちょっと打っていなくて申しわけございません。よろしゅうございますでしょうか。申しわけございません。
会計検査院も指摘していますが、組合員等の特定少数のためにつくられた施設ですけれども、実際上は不特定多数のお客様を対象にしています。簡保の施設等に直接申し込んでも、ほとんど加入者であるかどうかというのも聞きません。郵便局で申込書はだれでも手に入れることができるというのが実態でございます。
次に、我々が主張しています第三点目は、税金と公的資金のむだ遣いであるということでございます。
一番最初の現状と問題点と書いた部分の三ページ目についての資料でございます。資料の下に二十一、二十二、二十三という三ページのつづりがあると思います。それをおあけいただきたい。資料編の方をおあけいただきたいと思います。
膨大なお金が使われているのがこれでおわかりいただけると思います。ここに書いてあるだけで一兆二百八十億という数字でございます。それに交付金を足しますと、三十年計算しますと二兆九千億というお金になります。約三兆円近くになるわけでございます。三百七十施設で約三兆円なわけですから、公営宿泊施設三千軒と仮定しますと、ほぼこの三十年間で二十三兆六千億円に当たる公的な資金が使われたという計算になります。
次の資料をごらんください。下に十一ページ、十二ページと書いた部分でございますが、会計検査院の結果の要旨の十一、十二ページでございます。赤線で引っ張っているところがあると思います。表現は穏やかですけれども、閣議の決定対象外も含めて財政面からの自重を促しております。
その次のもごらんください。これは、前橋市の補助金の例でございます。二億五千万もの資金が使われております。
その次の資料をごらんください。二ページと三ページと書いた部分ですが、これは岡山県の倉敷の例でございます。
その次の資料をごらんください。下に九十八ページと書いた部分です。これは年金福祉事業団のグリーンピア、二千億としましたが、このお金はもうほとんど返ってきません。簡保でも非常にこういう赤字は出していますけれども、この簡保の資金もほぼ返ってこないでしょう。この責任はだれがとるのでしょうか。
その次をごらんください、日経新聞の記事でございます。
雇用保険料が上がるという予定でございます。ハイツやいこいの村、スパウザ小田原というような全国的に展開する施設に多額の保険料が使われている事実。保険料を上げるためには、これらの施設をなくさないと国民は納得しないというふうに思っています。
次の施設は第三セクターの例でございます。第三セクターも非常にひどい実態でございます。
その次が勾当台会館、宮城県の例でございます。県の市町村の教職員の組合ですけれども、多くの人が要らないと、職員さえも要らないというふうに言っています。その次が、下に二十六ページと書いてある部分でございます。
かなり公益法人がこの受け皿になっております。天下りの受け皿になっているということでございます。
その次の資料をごらんください。二ページと百三ページと書いたものです。この委員会が指示をしたにもかかわらず、簡易保険福祉事業団は二つの業態しか資料を出していません。百三と書いたページには八つの業態があります。八つの業態があるのに二つの資料しか提出をしなかった。簡易保険福祉事業団、簡保総合レクセンターは三施設とも赤字なんです。ですから出さなかったのじゃないかというふうに思っています。
その他、たくさん言いたいことがあるのですけれども、もう時間のようでございます。我々旅館業界、一生懸命お客様のためにやっております。それでも、この不公平なことで民業は圧迫されています。どうか我々の趣旨を、我々の願いをお聞きいただきたいというふうに思っております。
時間が超過して申しわけございません。(拍手)
原田委員長
ありがとうございました。
次に、奥野参考人にお願いいたします。
奥野参考人
東京大学の奥野でございます。きょうはお招きいただきましてありがとうございます。
私はこういう公的宿泊施設の専門ではございませんで、専門は普通の経済学、公共経済学という分野でございますが、三年ほど前から、行政改革委員会というものが総理府の下につくられまして、そこの官民の役割分担に関する小委員会というものの参与を務めましたので、それに基づいて発言をさせていただきたいと思います。
私の資料は基本的に三枚紙でございます。そのときの我々がやったことの一番大きなものは、「行政関与のあり方に関する判断基準」というものをつくりました。それはこの三枚紙の一番最後に「判断基準の概要」という形でまとめられております。
基本的には、「基本原則」として三つのもの、民間でできるものは民間にゆだねるという考えに基づき、行政の活動を必要最小限にする。それから、国民本位の効率的な、効率的なというのは費用を少なくするというだけでなくて、品質の高いものをできるだけ費用を安く、国民の負担を少なくという意味でございますが、そういう効率的な行政を実現するために、国民が必要とする行政を最小の費用で行う。それから三番目に国民に対する説明責任、アカウンタビリティーを果たすという、この三つを原則といたしました。
その「全般的な基準」として、その下にabcdというものが書いてありますが、これは追って説明いたします。
もう一つ重要なこととして「行政の関与の可否に関する基準」というものもつくりました。これは要するに、行政が関与すべき事業というのはどういうものであるかということについて、やや経済学の専門的な言葉を使ってつくったものでございます。
これは簡単に言えば、例えば有料道路でない普通の道路のように、民間につくらせようとしても全然もうからないのでつくらない、そういうような過小供給になるような財は政府が関与してよいとか、例えば電力のように地域独占になっているようなものというのは、ほっておくと料金がどんどん上がりますから料金規制をする必要がある、そういうものですね。つまり、市場に任せておくとうまくいかないもの、そういうものを一般的に市場の失敗というふうに申しますが、市場の失敗のあるものに限って行政が関与すべきである、市場の失敗がないものに関しては行政は関与すべきではないというのが、この「行政の関与の可否に関する基準」というふうに我々が言っているものでございます。これに、ここでは大きく分けてaからfまでのものを挙げております。
後で述べますが、私の考える限りにおきましては、こういう宿泊施設というものに関して市場の失敗があるとは考えられないというのが私の結論でございます。
その上で、三つの大きな基準に関して、今の公的宿泊施設の持っている問題点というのを幾つか簡単にお話ししてみたいと思います。
やや弁解になりますが、私、専門ではございませんので、にわか勉強でございますので、必ずしもここに書いてあることがすべての公的宿泊施設に当てはまるとは思いません。昨日ですか、簡保の事業団の方が説明に来られまして、いろいろ少しにわか勉強を追加的にさせていただきました。せっかく説明していただきましたので、例はどちらかというと簡保の例を使わせていただきたいと思いますが、簡保はどちらかというと説明責任をかなり果たしている方だというのが私の印象でございますので、別に私が特に簡保に悪意を持っているというふうにはとらないでいただきたいと思います。
まず、一ページの後ろからいきます。
説明責任ということですが、こういう公的な事業、公的宿泊施設も含めて、説明責任というものがきちんと果たされているとは余り思えません。
とりわけ会計面ですね。企業会計とか時価会計を使ったような会計ではなくて、しばしばこういう事業では損益計算書だけが出てきて貸借対照表的なものが出てこないとか、減価償却費みたいなものがないとか、簡保の例を使いますと、交付金という、政府からただでお金が入ってくるわけですが、それも収入に入れた上で全部の収支を計算しております。しかし、本来こういう公的な事業が行うような会計の場合には、政府から入ってくるお金というものは除いて、その上で損益を出して、その上で、政府からの借り入れとか出資とか交付金とかというものを含めて、それが幾らになっているのかということを別建てで出す、そういうことをすることによって初めて、国民の税負担であるとかあるいは簡保の加入者の負担であるとかということが明確になるわけでございます。そういう形のきちんとした会計をもうちょっと、ぜひ決算委員会あたりで基準をお示しになって、こういう形で会計をつくれということをおっしゃるべきではないかと思います。
簡保の例で申しますと、経常収支でいいますと、何か非常に大きな莫大な利益が出ているように見えるんですが、実はその大部分は政府の交付金という、ただで贈与されるお金が大部分であって、実際の収益は五千万円程度しかありません。
それから、かなりの部分が運営が公益法人に任されていますけれども、そういうものと一緒にした連結決算、これは最近の企業会計では当たり前のことですが、そういうことをきちんとしないと、赤字がそういうところにいろいろ分かれて、そこにまた補助金が入ってくるというような形で、はっきりしないということがあります。
それからもう一つは、それをした上で今度は分別収支をすべきです。各公的施設ごとにどれだけの赤字があるのか、どれだけの黒字があるのか、赤字、黒字が施設ごとにはっきりすれば、赤字のものはやめる、黒字のものは、後で申しますが、民営化すればいいということになるはずであります。
それから二番目に、効率化ということ、あるいはサービスの質の向上ということ、それに加えて受益の公平ということについて、二、三お話をしたいと思います。
まず第一に、なぜ民間で行えないのかということですが、先ほど申しましたように、市場の失敗というのがあるとは思いません。これは経済学の専門家の立場から申し上げてはっきり申しますが、市場の失敗がもし万一どこかにあるとしたらば、これは平等、公平の問題だと思うのです。
例えば簡保を例にとれば、簡保の加入者が貧しい人であるということは全然考えられない。全然考えられないと言っている意味は、貧しい人ももちろんいますけれども金持ちもいるという意味で、簡保の受益者は貧しい人という、等号では結ばれないということです。したがって、ここに政府が介入する必要は特にないということでございます。
それから、官業で行うことによって、民営化による競争圧力というものがなくなってしまう、したがってそれだけむだが生じる可能性が非常に強い。そういう意味でも、これを官業でやるということは望ましくないと思います。
それから、民営化すれば透明性が確保されます。先ほどから申し上げているような会計原則というのも、当然民間であれば自動的に企業会計をしなくてはいけないはずですが、そういうことが行われておりません。
それから、私はよくわかりませんが、しばしば言われることは、こういう公益法人であるとか事業団というようなものには天下りが入っていく。そういうことによって不透明なことが起こるという可能性もありますから、そういう意味でも民営化がいい。
その上でさらに、例えば簡保を例に挙げますと、多分簡保の加入者の中で不平等が起こっているということです。つまり、簡保の加入者だからといって全員がこういう公的施設を使いたいと思っているわけがないのに、そういう人たちのために交付金とか政府の資金、簡保の資金が使われるわけですね。ということは、公的施設を使わない人から使う人への再分配というものが行われているわけで、そういう意味では、機会均等の原則、平等の原則というものから外れるということになります。そういう意味でも望ましくない。
それから、税負担などでかなり優遇措置がとられておりますが、そういう意味でも民間事業者とのイコールフッティングが成立していない。そういう意味でも望ましくないというふうに思います。
そういう意味で、最終的に、我々の判断基準でいいます、民でできるものは民に任せるということで考えるならば、万一こういう公的施設の中で黒字のものがあるならば、そもそもこれは何も官でやる必要がないわけで、民間に任せればいい。赤字の施設だったらば、これは、赤字というのはその本来の、例えば簡保だったら簡保事業というものの財政を悪化させる。簡保というのは国の事業ですから、最終的には国が連帯保証をしているわけですから、万一赤字が不良資産化して、その赤字をどこかで穴埋めしなくてはいけないということになったときには、これは民間と違って倒産させるわけにいきませんから、国民の負担になってくる。そういう意味で、不要な負担を簡保の料金値上げであるとか国民の税金という形で強いるだけであるので、私はそういう赤字施設は廃止した方がいいというふうに思います。
その上で、そういうことをするためには、そもそも黒字、赤字を明らかにするために、先ほどから申し上げているように、きちんとした企業会計に基づいた損益計算書、貸借対照表をつくる必要があります。補助がどうしても必要であるという理由が万一あるとしても、こういうものは別会計で別建てで、お金が幾ら入っているのかということをきちんと明確にして補助を行ってほしいというふうに思います。
そういうことで、取りまとめますと、私の意見としては、この種の事業を官が行うということは、効率性を損ない、透明性を損ない、平等性を損なう、天下り先をつくる、民業の圧迫をもたらすということで、国民とか加入者にプラスがあるとは私には思えないので、できるだけ廃止をした方がいいのではないかというのが私の意見でございます。(拍手)
原田委員長
ありがとうございました。
次に、岡本参考人にお願いいたします。
岡本参考人
私ども観光の分野では、実はソーシャルツーリズムという言葉がございまして、これは適当な訳語がないのでございますけれども、端的に申しますと、経済的な理由その他によって観光旅行ができない人々に対して旅行に参加してもらう、こういう考え方でございます。本日のテーマの公的宿泊施設のルーツも、戦後このような理念があってスタートしたのではないかというふうに考えるわけでございます。
私の資料は全部で四ページでございますが、全部は申し上げません、少しずつ申し上げます。
このソーシャルツーリズムの基本的な理念は、この一ページの最後の方に書いてありますが、観光政策審議会の答申、平成七年でございますが、すべての人には旅をする権利があるのだという表現がございます。これは基本理念でございますね。ところが、経済的な理由、身体的な理由、あるいは知識がない、そういったことで旅行へ出かけられない、そういう人たちに対して援助をする、これがソーシャルツーリズムでございます。
こういった思想が発達した、はぐくまれましたのはヨーロッパでございます。スイスのフンツィカーという教授は、一ページ目の二番目に書いてございますが、そのようなことを申しております。その後ろのところですね、すべての人が旅行、バカンスをすることができるように協力するのはスイス国民一人一人の義務であるというふうに言っているわけでございます。
さて、それではソーシャルツーリズムということで一体具体的にどういう施策を行うべきかということでございますが、観光ができる、できないということには、その背景としていろいろな規定要因がございます。まず、お金がなければ行けない、暇がなければ行けない、あるいは気持ちにゆとりがなければ行けないという主体側の条件がございますね。また、交通機関が整備されなければ行けない、宿泊施設がなければ行けないといったような、客体側の条件が整備されなければ行けない。
いろいろな要素、要因に対して働きかけるということになりますが、まず対象としては、経済的な弱者ということが戦後のスタートでございました。
最近は所得水準が上昇しまして、経済的な理由だけではなくて、例えばそこにございますように、二ページ目の六番をごらんいただけませんでしょうか、児童生徒でございますとか青少年、こうした旅行の機会に恵まれない国民を対象にして何らかの施策をする。具体的には、ユースホステルをイメージしていただければいいかと思います。ユースホステル、これは国から財政的な援助をいたしておりますが、ユースホステルというのは、青少年に大いに旅行をしてもらって見聞を広めてもらう、こういう考え方でございますね。
それから、家族ですね。これは、日本では家族が旅行できない状況がございます。子供を抱えてなかなか旅行ができない、休みもとれない、こういう状況ですね。世界で最も家族旅行ができない国じゃないでしょうか、この日本という国は。
それから、高齢者、障害者、こうした方たちがソーシャルツーリズムの対象でございます。
二番目に、施策の類型として、主体側に対して何をするか。一、二欧米の事例を申し上げましょう。
一つ、これはスイスでフンツィカーという教授が始めたことでございますが、スイス旅行公庫協同組合というのがございます。これは何をしているかといいますと、旅行切手を発売しているのでございます。企業だとか個人が組合員になりますが、組合員になりますと額面の三%引きで切手が買えるんです。しかし、これは、実際に旅行に行くときはホテル代、汽車代として額面どおりに使えるということですね。三%引き、大したことありませんが、しかし、これは実は二割引き、三割引きになるのです。なぜか。企業が負担するからです。企業が二割、三割負担して切手を社員に、従業員に販売するというようなことをしております。組合は、切手を受け取った事業者に額面の七%引きのお金を支払うというような仕組みになっております。
これは、施設はどこへ行ってもいいわけですから、ソーシャルツーリズムのソフト面的な対応ということになりましょうか。
それから、施策の類型として、客体側の規定要因、施設整備ということがございます。
そこで、一つだけ事例を申し上げましょう。
これは、フランスに家族休暇村というのがございまして、この家族休暇村というのは、先ほどユースホステルのことを申しましたが、ユースホステルの家族旅行版みたいなものですね。これは、日本でいえば国民休暇村のようなものでございまして、家族が対象です。ですから、中に保育所がございます。そして、幼児、子供は保母さんがついてちゃんと食事の世話をしてくれる。ですから、若い夫婦も安心してバカンスを楽しめる。
こういう施設がフランスには国内、海外に百以上あるわけでございます。これに対して国が間接的に援助をいたしております。そして、このフランスの家族休暇村は、最低一週間泊まらなきゃいけないのです。バカンスですね。それから料金は、所得に応じて料金が違うという仕組みになっております。これがソーシャルツーリズムというものでございます。
それから、次の三ページに参りまして、もう結論になりますが、公的宿泊施設について私はこんな感じを持っております。
世界を見渡してみますと、日本の特色というのは、非常に多彩な、多様な公的宿泊施設があるということですね。これくらい公的宿泊施設がいろいろなものがある国というのは珍しいのじゃないかというふうに思います。
ちなみに、アメリカを見てみますと、公的宿泊施設はございません。ただ、あるなと思いますのは、オートキャンプ場です。これがもう無数にございます。これは公営ですね。あるいは、宿泊施設ではございませんがゴルフ場など、これも市営のゴルフ場などがたくさんございます。ですから、公的なものは全くないわけじゃありませんが、宿泊施設はございません。
そこで、私が公的宿泊施設についてどういうふうに考えるかと申しますと、肯定的な側面としては、今申し上げましたようなソーシャルツーリズムを促進するということになりますね。廉価な宿泊施設を整備すれば所得水準の低い人も旅行に出かけられるということになりましょうか。
それからもう一つ、観光地づくりへの貢献というのがございます。これは、とにかくそういう施設ができれば雇用効果が発生する、お客さんがお金を落とせば所得効果が発生する、お土産も売れる、地域の物産も使われるというようなことになります。
しかし、これは民間がやればいいことというふうにいえばそれまででございますが、しかし、黙っておったのでは民間が行かないようなところがあるわけでございますね。ですから、そういうところに先導的に施設ができますと、観光事業の振興を誘発するというような効果があるいは認められる場合もあろうかと思います。
それから、民間の自由に任せておったのではせっかくの自然環境がめちゃめちゃになる可能性があるというような場合も、あるいはあるかもしれません。国民休暇村などは国立公園の中にございますが、ああいったもの。そういう形で存在意義があるいはあるのかもしれません。
さて、否定的な側面は、お二人の参考人からお話がございましたので、私は繰り返すことはいたしません。
これからのあり方でございますけれども、私はこんなふうに思います。
まず、先ほど奥野先生から市場の失敗というお話がございましたが、民間企業だけに任せておったのでは国民の旅行する権利が守られるのかということを真剣に考える必要があります。
民間企業の動きはどうでしょうか。私の印象は、ほっておきますと、どうもねらう市場が偏りますね。やたら独身貴族をねらうとか、あるいは団体旅行ばかりねらうとか、あるいは、その商品も一泊二日ばかり。もう長期滞在なんというのはありはしないというような、何か、自由に競争していろいろな品ぞろえが多様に発展すればよろしいんですけれども、なかなかそういうふうに現状はなっていない面があるいはあろうかなと思います。それから、身障者対応などはどうなんでしょうか。
私は今そういうふうに思いつくわけでありますが、こういうことを厳しく確認する必要があろうかと思います。それで、民間企業では担えないサービス機能に限定すべきであって、全般的に私は抑制すべきだと思います。抑制の例外を厳しく確認するということですね。
そして、そこにございますような、どういう理念で、どういう目的で、だれを対象にするかということをはっきりさせるということです。そして、その目的とか対象を担保する運営方式を確定する、そして定期的な費用対効果の測定と評価、結果のディスクロージャー、こういうことを厳しくやる必要があろうかと思います。
最後に、これはつけ足しでございますが、私ども、こういう宿泊施設の整備などを議論しますと、官か民かということになるのでございますが、世界を見渡してみますと、官と民の間のNPOがさまざまなそういう余暇施設の供給を世界ではいたしております。そういう意味で、昨年NPO法ができたということは、私は非常に喜んでいるわけでございます。
以上でございます。(拍手)
原田委員長
ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
これより参考人に対する質疑に入ります。この際、参考人各位に申し上げます。御発言は、すべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。また、委員に対しましては質疑ができないこととなっておりますことを、あらかじめ御了承いただきたいと思います。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正和君。
倉成委員
自由民主党の倉成正和でございます。
きょうは、参考人の三人の方に来ていただきまして、いろいろと意見を述べていただきました。
針谷参考人につきましては、旅館組合を代表してのお立場から、民業圧迫についての御意見をいただいたと思います。
それからまた、奥野参考人の方からは、経済学的な見地からの御見解を述べられて、公的宿泊施設については非常に疑問があるというような旨の御意見をいただいたと思います。
それからまた、岡本参考人の方からは、別の、ソーシャルツーリズムという観点から、いろいろ問題はあるとはいえ、やはりその役目、役割というのもそれなりにあるのじゃないかというような観点のお話をいただいたと思います。
その中で、私なりにこの問題を少し整理をして考えておきたいと思って、いろいろな問題がたくさんあるかと思いますけれども、どの観点で申し上げたらいいかというのを、今お三方のお話を伺いながら考えていたわけです。
一つは、官業のあり方という面で、行財政改革の問題からいって、非常に赤字のものがもしあるとすれば、それはやめていく方向にやるべきじゃないかという御意見があると思います。それからもう一つの観点は、公的宿泊施設が実際に民業を圧迫をしているということがあれば、やはりそれは正すべき観点じゃないかと思います。
そして、そういう観点で考えますと、大きく分ければ、今のこの公的宿泊施設を存続していくか、やめていくべきかというような大きな観点があるかと思いますけれども、存続をするのであれば、どういう方向にこれから公的宿泊施設を進めていったらいいか、そういう観点での検討がなされるのじゃないかなと思います。
そこで、三人の参考人の方にお尋ねをしていきたいと思っておりますけれども、例えば、一つの役割を終えたというふうなものがあると思います。といいますのは、これから法人そのものが廃止をされるようなもの、あるいは、閣議決定でもこれから原則として新設その他は行わないというのが方向として出されているわけですけれども、役割を終えたものについて、例えば先ほどの奥野参考人の方からは、黒字のものはもう民営化をすればいいというお話がありまして、それで、赤字のものは廃業すればいいという明快なお話だったのです。
その点で、針谷参考人の方から順にお尋ねをしたいのですが、例えば、黒字のものを民営化するということでいいのか、赤字のものは廃業ということでいいのか。あるいは、その場合に、施設とか職員とかの処遇というのは、そこで働いている方もいるわけですし、それからそこに施設が現にあるわけでございますので、その点はどうお考えなのか。
この点につきまして、時間の関係もございますので、まず、お三方から短くお話をいただければと思います。
針谷参考人
黒字の施設の民営化、大賛成でございます。競争条件が同じということは大賛成でございます。ぜひそうお願いしたいと思います。
赤字の廃業、当然だと思っております。
奥野参考人
先ほど、全部、黒字は民営化、赤字は廃止と申しましたけれども、もし何らかの形で存続する可能性があるとしたら、一つだけ考えられることがあると私は思います。
それは、弱者のために宿泊施設をつくるという考え方であって、普通、経済学で考えるときは、弱者にはお金を上げればいいのですが、お金をもらうということには、弱者だと決めつけられるのは嫌だという人も結構多いわけで、それはかわいそうなんですね。そういう意味でいうと、弱者が使うような施設に特化するということが一つだと思います。
ということは、言いかえると、余り高級な施設はつくってはいけない。むしろ、施設としては余り質はよくない、言い方は悪いのですが、そのかわりに料金を安くする、それで弱者が喜んで使う。お金を持っている人は、そんな質の悪いものは使いたくない。そういうものに特化していくという形で、とりわけ従業員などの救済を考えるということはあり得るかもしれません。
ただ、いずれにしても、今の規模は余りにも大き過ぎるということは確かだと思います。
岡本参考人
私は、黒字、赤字には関係なく、必要があれば、理念があって、目的があって、対象が明確であって、それに国民的な賛同が得られれば赤字でもやるべきだ、こういうふうに思っております。
倉成委員
今お三方からそれぞれの御意見をお伺いしたのですけれども、先ほど奥野参考人からお話がありました、黒字だったら民営化、赤字だったら廃業というのは、一つのある程度わかりやすい基準だとは思いますけれども、実際には、その中で、奥野参考人の方からもお話がありましたように、弱者に対する施設というのがあり得るのじゃないかというお話でありました。
その中で、民がやるべきもの、それから官でやるべきものの切り分けが今若干明確じゃないのじゃないか。やはりそこが今度のいろいろな問題点の出発にあるのじゃないかなというふうな感じがいたしております。
そして、その原因をたどりますと、ここにいろいろな施設がございますけれども、それぞれが、違った省庁が管轄をして違った目的が掲げられてスタートをしたということがございます。そのいずれも、今お話がありましたような、例えば、弱者に対する観点、あるいは障害者に対する観点、あるいは高齢者に対する観点というのは、そこの目的の中にはどこにも見えないわけでございまして、この辺に少し問題があるのじゃないかなという感じはいたしております。
その中で、こういう施設が実際に、現にあって、そして先ほど岡本参考人の方からお話がありましたように、その地区での観光の推進の面とか、あるいは観光資源を開拓するという面でそれなりの貢献をしている施設も若干あるかと思いますので、そういう面で、これからのあり方というのは、一つ一つの施設を変えていくということもありますけれども、あるいは統合的に公的宿泊施設を考えて、そしてそのあり方を全体として考えるという考え方もあるのじゃないかと思います。
これは非常に難しい、各省庁にまたがる問題ですので、簡単ではないと思います。時間がございませんので、今ここでは申し上げませんけれども、最初にそれぞれの設置についての趣旨、目的としてできたものがそれぞれありますけれども、残念ながらそれが必ずしも今の現状と一致していない、そういう現状があるんじゃないかと思います。
そこの中で、各参考人の方にお尋ねしたいのですけれども、今、公的宿泊施設を何らかの形で存続させていくときに、どういう観点でこれから考えたらいいか。それとも、先ほどの針谷参考人の方からの、もうとにかくやめてしまうというようなことなのか。その辺のところをちょっと手短にお答えいただければと思います。
お一人ずつお願いします。
針谷参考人
全国の旅館組合でシルバースター制度というのをやっておりまして、今六百軒入っております。もっともっとふえると思います。弱者のための施設整備を図ろうということでやっております。
これなんかも我々の活動の一つでございまして、それがどんどん拡大されれば、先生のおっしゃったような弱者救済には我々民間で十分に対応できるというふうに思っております。
奥野参考人
仮に、私が先ほど申し上げたように弱者に特化するとしても、現状のように、例えば郵便貯金であるとか簡保であるとか年金であるとか、こういうものは、本来、利用者のために健全な会計を保たなくてはいけないものでございます。それがこういう、多分かなり大きな赤字を抱えていると私は思うのですが、こういう事業につぎ込んでいくということは、国民のために全然ならない。むしろ、こういうものは統廃合して、きちんと、国費が幾ら、どういう形で入っているのかということを明確にする。それは、郵貯とかそういうものではなくて、国民の税金をきちんと投入する、それが幾らであるかという負担を見て、国民がどのぐらいの規模であるかということが判断できるような仕組みに変えていくべきだというふうに判断します。
岡本参考人
私は、社会的弱者に対して、公的な対応の必要性は残されているというふうに思います。
先ほど申しましたが、例えば日本では、幼児、小学生を抱えた若い家族が旅行できるような条件がまだまだ整備されておりません。例えば、保育所のある休暇村があるか。若い人がバカンス、休暇を楽しむときに子供の面倒を見てくれるような、そういう仕組みというのはないわけですね。ですから、そういうものがあったらなというふうに思うことがございます。それだけではございませんが、そういう市場は、民間企業だけでは必要なサービスが提供されない面はあるのではなかろうかというふうに思っております。ただ、それを、例えば簡保で整備をするとか、それとこれとは全く別な話でございまして、公的な対応をすべきだ。
それから、必ずしも施設のことだけを言っているわけではございませんで、例えば、今最も急がれるのは休みを確保するということですね。日本は、有給休暇がほとんど機能していない、世界でも本当に珍しい国ですね。ですから、有給休暇を整備するというようなことが喫緊の課題だろうというふうに思っております。
以上でございます。
倉成委員
今それぞれのお立場でお話をいただいたのですけれども、最後にお述べいただきました岡本参考人の方からの資料の中で、御説明もありましたけれども、フランスの家族休暇村、託児所つきの休暇村というような施設、あるいは障害者の方向け、高齢者向けの施設というのは、これからの日本ではますます必要な施設になっていくという感じがいたします。そういうものをすべて民間でつくっていくのが可能なのかどうかということについては、若干これから検討していく必要があると思います。
そしてその中で、今いろいろ議論になっていますけれども、同じ土俵で同じような不特定多数を対象とするような施設、現にいろいろな資料や、あるいは私どもの長崎市でございますけれども、いろいろな話を聞きますと、やはり民間の旅館、ホテルと同じ土俵で争っているような傾向がこれはどうしてもある。その面がこれから改めていくところじゃないかなという感じがします。
しかし、先ほど岡本参考人からも出ましたような、そういう特色がある、そして社会的弱者、民間ではこれから整備をされるというふうなお話でございましたけれども、現実には整備ができていないようなものに多少特化をするような、そしてその中で、いろいろな施設がそれぞれの法律に基づいて、目的に基づいてできている経緯がございまして、なかなか一律には論じることは難しいと思いますけれども、そういう観点でこれから検討をしていければと思います。
時間がございませんで、多少おくれておりますので、私の質疑はこれで終わらせていただきたいと思います。参考人の方には、本当にありがとうございました。
原田委員長
次に、石井紘基君。
石井(紘)委員
まず、針谷参考人に伺いたいのですが、この公的宿泊施設というのは、今回会計検査院が調べられたのは三百七十ということでございますが、その他、特殊法人、公益法人、あるいはまた都道府県、市町村で相当数持っていると思うのですが、全国でおよそどのぐらいあると考えておられますか。
針谷参考人
ここに「全国公営の宿三〇〇〇」という本が出ています。これをよく調べますと、大体五割ぐらい抜けているような気がします。したがいまして、三千以上は間違いないのですけれども、四千なのか五千なのか、第三セクターもあると思いますので、そこまで入れますとかなりの数字に上ることは間違いございません。四千か五千かはちょっとわかりません。
石井(紘)委員
奥野先生に伺いたいのですが、先ほど、市場の失敗はないというお話でしたが、ちょっと、見方にもよろうかと思うのですが、我が国の経済活動のあり方というもの、これは原則は自由主義市場経済ということでやっておるはずなんです。しかし実態は、官のビジネスというものが大変膨大に、無限に膨れ上がってまいりまして、今回の、今出ている公的施設だけを見ても、例えば管理とか運営というようなものは、かなりの部分、第三セクターなりあるいは公益法人なりというものがやっておって、そういうところには相当数の天下りが行っておるということでございますので、役所が天下りのためにそういう商売をどんどん広げてきた、こういう傾向は否めないだろうと思うのですね。
こういうことは、必ずしもこの宿泊施設だけではなくて、あらゆる産業分野と言ってもいい領域に蔓延しているわけですね。それによって市場経済の機能というものが非常にゆがめられてきておる。経済対策なんというのも、従来のケインズ流でやっても、あるいは市場経済だと思いながらやっているのだけれどもそれが効かないというのは、実はこの市場経済というものが非常にゆがんだ、限定的なものになっておるというふうに思うのです。
そこで、行政の仕事、領域、こういったものについてはどういうふうにあるべきだと。そういうビジネス、経済とそれから行政というものの領域といいますか、そういう点ではどんなふうにお考えでしょうか。
奥野参考人
おっしゃるとおり、本来、日本というのは市場経済、自由経済の国でございますから、今、現状は官が極めて裁量的な行政を行っているというふうに思っております、それをやはり正さないといけないというふうに思います。むしろ、そういう裁量性、つまり、事前にビジネスをやっていいかどうかということを官が決めるという仕組みから、自由にビジネスをやらせた上で事後的に問題があるものをチェックするという事後チェック型の行政に変える必要があるというふうに、一つは思います。
ついでですが、行政改革、ここは決算委員会ですから行政改革ということを論ずる場ではないかもしれませんが、今の日本は、少し官僚の数が本当は少な過ぎるのです。先進国の中でも、実は官僚の数が、特に中央政府の官僚の数が一番少ないというふうに言われています。少ない人間できちんとした行政をやろうとすると、事後チェックはできなくなるのですね。それで仕方なく裁量をやっているという面もあります。ですから、むしろ、例えば公正取引委員会であるとか、あるいは総務庁関係の行政監察であるとか、あるいは国税庁であるとか、そういうところは人員をふやすということを一つはすべきだと思います。
それからもう一つは、自由主義である、自由経済であるということの裏には、政治的には民主主義というものがなくてはいけない。民主主義というのはどういうものであるかというと、三権が分立している、互いにチェック・アンド・バランスをするということであるわけです。
ところが、今の日本は、実は行政が物すごく突出してしまっている。そこで、行政がやっていることをまさに事後チェックする機関がない。ないといいますか、本当はありまして、それがこの委員会であるはずなのですが、これが、大変失礼な言い方になるかもしれませんが、その決算委員会が今のところ余りちゃんと機能していない。むしろ、こういう機構を拡大して、アメリカではGAOという非常に大きな人員を抱えた大きな機関がありますが、そういうものをぜひおつくりになって、政治の側が行政を事後チェックする、そういう形でまさに天下りをチェックし、官の肥大化を抑えるというようなことを打ち出されることが必要ではないかというふうに考えます。
石井(紘)委員
大賛成でありまして、大変すばらしい御意見をいただいたと思います。
確かに、もともとの官僚のといいますか、行政マンの数といいますのは割合からいくとやはり日本は必ずしも多くない、私もそう思うのですね。ところが、この天下りビジネスというもの、この周辺、官の周辺といいますか、行政の延長が経済分野にもずっと入り込んできて、この部分が非常に大きいものですから、行政の肥大化というふうに言われるわけですね。一方では、民間経済に対しても、許認可だとか、あるいは行政裁量による権限だとか、そういったものでもってずっと網がかぶさっている。したがって、全体が官営経済体制のようなことになっているわけですね。
だから、そういうふうに考えますと、やはり本来の行政というものは、福祉だとか教育だとか外交だとか、いろいろあるでしょう、そういったものを必ずしも一律に全部何%なんということで切っていく必要はないと私は思うのですが、しかし、ここまでが行政、ここから先はビジネスというやつは、ぴしっと分けなければいけない。市場経済をそれによって活性化させていくということをどうしてもやらなければいかぬと思うわけですね。この行政監視委員会、あるいは会計検査院なんかもそうでしょうが、そういうチェック機能というものは、御提言いただきましたように、我々もそれは十分国会が発揮できるように、これは頑張ってもらいたいというふうに思うわけでございます。
そこで、今度は岡本先生にも伺いたいと思うのです。
どうも、地域にもよるのですけれども、日本のホテルとか旅館というものは非常に値段が高い。なぜ高いかというと、人件費も高いし、あるいは公共料金も高い。今の話の延長ですが、官が非常にそういうビジネスの分野に進出してきているものですから、光熱にしても上下水道等にしても、あるいは運賃、輸送費等々というものが、それによって世界一高い水準になってきてしまっている。したがって人件費も高い。あらゆるコストが高いということでもって、そういう意味では、市場経済は余り機能していないという状態なんだと思うのです。
それによって、ホテル、旅館の宿泊費等も高くせざるを得ないというところはあるのだろうとは思うのですが、やはりこれは競争の原理で、やはりビジネスですから、下げられるだけ下げて、使いやすく、そして余暇があれば気軽にといいますか、行きやすいようにする必要があると思うのですね。ですから、世の中全体の経済の、公共料金や何かのあり方は別として、ホテル、旅館というレベルでもってもうちょっと工夫はできないのかという点についてはどんなふうにお考えですか。
岡本参考人
委員御指摘のとおりだと思います。
ただ、私はそんなに心配いたしておりません。何が一番大事かと申しますと、消費者がしっかりするということが大事ですね、高いものは買わないと。ところが今までは、旅行に出かけるなんということはもう一年に一度、晴れの経験でございましたから、余り日常化していなかったのです。ですから、余り関心がなかったのですね。ですから、高いものも、どうせ一年に一度だからということで許しておったというような面がなかったか。
最近、見ていますと、これはもう観光旅行も日常化してまいりまして、消費者の選別、選択の目が非常に厳しくなってまいりましたから、消費者の琴線に触れるような、廉価ないいサービスをしているところは、この不況の中でも大いにビジネスが盛んになっておりますね。従来のような、コストが高いからということでそのまま高い値段で商売をするようなところはどんどん脱落していく。ですから、ホテル、旅館もこれからどんどんつぶれるところが出てくるだろうと思います。これは、マーケットメカニズムが働いているということで大変結構なことだということで、これから先、そんなに心配はしていないわけでございます。
そんなことでございます。
石井(紘)委員
それでは、同じ質問で針谷参考人に対しても、ぜひ現場の立場から、先ほど言いましたように、それはもう交通費も高いわ、ガソリン代も高いわ、何もかも高くて、消費者にしてみても、出かけていくのもなかなか大変な中で、宿泊費も高い。例えば、泊まるだけだったら大したことないはずなのに、余り食べたくもないような料理までたくさん出てしまって、そういうものが一律に――料理を、おいしいものを食べたいと思って行く人もいるのだろうけれども、そうではなくて、やはり自然を楽しみたい、料理は山菜料理ぐらいでいいやというような人もいろいろいるのだろうと思うので、そのあたりの工夫も含めてどんなものか、御見解を伺っておきたいと思います。
針谷参考人
交通公社の調べで、一万四千円ちょっとという宿泊料金が平均でございます。
最近急激に、団体旅行から個人のお客様になってきました。うちでも例えば、五、六人いらっしゃって、領収書を五で割ってくれと。五で割って、向こうの喫茶の方で、一人幾らだよ、こうやって集められます。団体ですと、三十人、四十人お越しになって、自分が幾らの宿泊料になるのかわからないですけれども、個人ですと幾らかがわかります。ですから、非常に価格志向が強くなって、お客様の要望にこたえるためには、コストパフォーマンスがよくなければ生き残っていけないわけです。
自由主義社会の申し子みたいな旅館業でございます。高いところはいずれ、そういうコストパフォーマンス、絶対的な金額ではなくて、品質の割に高いところは淘汰されていくのが旅館商売でございます。今後、ますますその傾向は強まっていくというふうに思っております。
石井(紘)委員
参考人の先生方、大学の試験シーズンでもあり、大変お忙しいようでございますので、私はちょっと早目に終わりたいと思いますが、最後に、これは質問じゃないのですが、ここに針谷参考人がお持ちいただいた資料の中に、公的宿泊施設が国の金を使ってこういうものをやるのだから安い料金でできるのは当たり前なので、そういうものがさらにこんな、特別宿泊ご優待だとか、無料送迎だとか、カラー刷りのすごいこんなチラシまで配りまくって、そして何とか遊パックだとか、とっておきプランでメンズプランがどうだとか、こんな大々的な宣伝までしてやるなどというのは本当にけしからぬ話だということを、私はこれは役所の皆さんに特に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
原田委員長
次に、赤羽一嘉君。
赤羽委員
公明党・改革クラブの赤羽一嘉でございます。
本日は、三名の参考人の先生方、貴重な時間また貴重なお話をいただきまして、どうもありがとうございます。
十五分間という限られた時間でございますので、端的に質問をさせていただきたいと思いますが、まず、今日の皆さんの御意見、私も本当に、ほとんど同感でございます。
まず、公的宿泊施設についての目的という中で、各種社会保険等の被保険者に対する福祉還元をする、こういうふうにうたっておるのですが、先ほど奥野先生の中でも若干ありましたけれども、私は、本来、保険加入者への還元というのは保険料の値下げとか配当のアップとかということでされるべきであって、こういった公的宿泊施設の目的というのが本当に加入者の目的に合致しているのだろうかということで、この目的自体というか、その役割自体がもう既に認められなくなっているのではないかというふうに思います。まずこの点につきまして、奥野先生は多分同感だと思いますが、奥野先生と、その後、岡本先生にもお話をいただきたい。
奥野参考人
まさにおっしゃるとおりでありまして、私もほかのお二人の参考人がおっしゃったように、戦後すぐの時代というのは、やはり時代環境として、こういう福祉事業というようなものも公的な機関がやる意味があったと思うのです。しかし、もう今この時代になって、国民が総中流化しているような時代、このような時代に、しかもまさに簡保とか郵貯とかというのはかなり高額所得者が加入している、あるいは年金も同じことですが、そういう人たちにこういう種類の福祉還元をするということの意味がどこにあるのか。しかも、まさに先生がおっしゃられたように、必要な人、必要でない人が分かれているわけですから、それはやはりもう少し透明にして、まさにおっしゃるとおり、料金の値下げ、配当金の値上げという形で還元されるべきだというふうに思います。
岡本参考人
ただいまの奥野先生の御意見に、まず基本的に賛成でございます。
ただ一言、私からつけ加えたい点は、観光旅行というのは国民の健康維持にとって非常に重要でございます。とりわけ高齢者にとって、旅行に出るということは、これはホリデーという言葉がございますが、これはホールからきておりまして、うちで寝たきりでなくて、旅行に、旅に出かければ、人間が人間としての全体性を取り戻す。ですから、元気になるのですね。ですから、旅行に出かけてもらうというのは非常に重要なのです。そういう意味で、国民の健康を維持する、大いに促進するという意味で、今の御指摘のお話がどの程度関連するかということを、私自身はもう少しきちんと調べたいなというふうに思っております。
それ以上は、今直ちに、だから必要だということまで申し上げるつもりはございません。以上でございます。
赤羽委員
どうもありがとうございます。
岡本先生の今の御発言の中で、多分、観光について、日本の今のあり方というのですか、恐らくツーリズム、サイトシーイングだけではなくてツーリズムだということでもう少し見直していかなければいけないというのは、私も全く同感です。私自身、今運輸委員会の理事をやらせてもらっておりますので、その点は同感で、時間があれば後でお話を伺いたいと思います。
まず奥野先生にちょっとお伺いしたいのです。
黒字施設なら民間でできる、赤字施設は廃止すべきだという、この結論のa、bの部分ですが、ちょっと変な聞き方ですけれども、黒字施設なら民間でできるというのはそうなのだと思いますが、公的宿泊施設の場合、そもそも前提条件が民間より優遇された条件で行われているというのは、先ほどの針谷さんのお話からも明らかでありまして、そういった前提条件があるから黒字施設というものが存在するのではないか。ですから、それが民間と同じような条件になれば、基本的には黒字施設というのはある意味では存在し得ない構造なのかなという気が先ほどお話を伺っていてしたのですが、その辺はどうお考えでしょうか。
奥野参考人
私が申し上げましたのは、いわゆる事業全体として黒字であるわけはないと思います。絶対にないとは言いませんが、事実上公的資金が入っているわけですから、それで大体、独立採算といいますか、一応損益が合致するわけですから、全体としては損失があるだろうと思います。
ただ、先ほど針谷参考人の方からお話がありましたけれども、何千もの施設の中には、立地条件も非常にいい、施設も非常にいい、ですから非常にお客がたくさん押しかけるというような施設もあるのではないか、そういうものは黒字かもしれない、そういうものは民営化したらいいと思います。
そういう意味でいいますと、さっきから申し上げましたように、各施設別にきちんとした企業会計をやって、その上で、公的資金が入らなかったときにどの施設が黒字であってどの施設がどれだけの赤字を出しているのかということをきちんと国民に公開する、これが説明責任であって、それをやるということが、こういうことをやる上でのまず第一の条件ではないかというふうに考えております。
赤羽委員
施設別の企業会計を持って明らかにさせていくというのは、まさに我々の責務であるというふうに思っております。
それで、赤字の施設を廃止するということでありますけれども、この公的宿泊施設、どのように処理するのが具体的には適当と考えられるか。実際には、採算性が非常に悪い施設を地元、県、地方自治体に売却するというような話もなかなか進んでいないようにも聞いておりますので、この辺具体的に、概念として、廃止するということはよくわかりますけれども、現存、ある施設をどのように処理すべきかというのを、奥野先生のアイデアがあればお聞かせいただきたいと思います。
奥野参考人
多分二つやり方があると思うのですね。
一つのやり方は、どうしても残した方が何らかの意味で、例えば地域振興とかそういう意味で必要なものというものがあるならば、これは入札にかけるべきである。入札であるということの意味は、お金を民間に出させてそれで買い取らせるのではなくて、赤字補給をしてやる、その赤字補給をしてやるから経営を続けてくれないかというやり方ですね。それで、赤字補給額が一番少なくて済むところに運営させるというのが一つのやり方です。
ただし、これは何らかの意味で存続させることに意味がある場合ですね。普通、赤字の企業というものは、続ければ続けるほど赤字がたまるわけです。確かに、施設はあって赤字がたまっているから存続させるというふうに素人の方はお考えになるのですが、それは間違っています、経済学的には。続ければ続けるほど赤字がたまるのだったら、赤字ならやめる、廃止する、廃棄するというのが一番重要なことです。そういう意味では、私は、基本は廃棄、どうしてもという場合には、さっき言いました赤字補てんの入札ということだろうと思います。
赤羽委員
それで、ちょっと話を戻しますが、赤字の原因というのはどういうところにあるのかなと。これ、針谷さんの御専門なので。
条件も優遇されている、公的資金も導入されている、にもかかわらず赤字が大半だ、半分くらいは赤字だ。実はこれはちょっとよくわかりにくい話だと思うのですね。天下りで、抱えなくてもいいような人件費が圧迫しているのか、もしくは経営のあり方そのものが素人でフィッティングしていないのか、いろいろ理由はあると思いますが、この辺についてはどうお考えでしょうか。まず、針谷さんから、経営のプロとしてのお話を伺いたいと思うのです。
針谷参考人
俗に言う、親方日の丸では旅館経営というのはできません。そんなに生易しいものではございません。すべての施設とは言いませんですけれども、ほとんどの施設が怠慢ですね。非効率です。無責任です。品質管理などほとんどできていません。コスト管理もありませんし、動線を無視した施設、独占的な物品を納入している業者、これで黒字になれば不思議なほどです。我々旅館でも、一生懸命やっていて、八〇%赤字と言われています。私、朝七時五十分から出てきまして夜十時半まで、毎日毎日十五時間働いています。それでもいいかげんなものなのです。それを、そんないいかげんなことをやっていて、黒字になるはずがありません。絶対に無理ですね。
それと、旅館業の経営は、基本は人なのです。お客様に喜んでいただこうと思ったら、やはりサービスです。それをできるのは経営者だけです。作法とかなんとかという技術的なことはプロを呼んでくればできるのですけれども、社員を一生面倒を見て、心のところまで到達するのには、経営者がど真剣になってやらないとできないのです。ですから、公営では、これは絶対にいいサービスができないです。お客様に喜んでいただくからこそ経営は成り立つわけでございます。満足をしていただけない施設というのは成り立ちません。
赤羽委員
私も実は、有馬温泉が地元選挙区内にある地域でございまして、よく旅館経営者の皆さんのお話を伺っていると、全く同感に思います。
同時に、なぜにこれほど採算性を無視した形でこういった公的施設が増殖してきたのかというふうに思うのですが、その点については、奥野先生、どうお考えですか。
奥野参考人
要するに、基本的に政府というのは、あるいは官業というのは、営利を目的としませんので、昔の国鉄がそうですけれども、まず第一に費用を最小化しようという、つまり、利益を最大化するためには収入をふやして費用を減らすわけですが、費用を減らそうというインセンティブがまず第一に全然ないわけですね。むしろ、費用は、例えばできるだけふやして、それを自分たちでうまく使うのが一番いい。まさに天下りなんというのは、そういうものの典型なわけです。ですから、そういう意味でいうと、経営全体を民間に任せる。さっき私は入札でやりなさいと言ったのは、まさにそういう意味なのです。赤字補てんをしてやって、あと民間に任せれば、民間は要らない天下りは切ります。それから、要らない非効率な事業も切り捨てます。それで補てんを加えて、できるだけもうけたいというインセンティブが生まれてくる。
基本的に、官は営利事業をしてはいけないということだと思いますね。もし営利事業をさせるときには、明確に赤字を補てんするなり、場合によっては黒字を吸収するなり、何かそういう形で事実上民にやらせるということが一番望ましいということだと思います。
赤羽委員
ありがとうございます。
ちょっと時間も押していて、本当は岡本先生の御持論であるソーシャルツーリズムについての御発言もいただきたかったんですが、私は、本当に、遊びに行くという感覚じゃなくて、日本人は一生懸命働いたら年間一月ぐらいはいろいろなところに行く、そこでまた人生の活力を得るという発想というのは大事である、そういった意味で公的施設というものの位置づけをするということは必要だというふうに思っております。ただ、それが、今回のこのような簡保とか、現状でいいのかというと、多分それでは違うんだというお話だと先生のお話を理解させていただいております。
それだとよろしいと思うんですが、そうしますと、そういった形での役割分担というか共存は、民間の、針谷さんの立場で、実際可能かどうか。高齢者とか特殊なというか、ある程度の役割を担った公的施設というのが新たにできる、そこは、民間の旅館業として共存していくことはどうお考えなのか。
例えば熱川地域のことをちょっと私雑誌で読んだのですが、公的施設があるので非常に客が来るようになった、そこで、少し高級感のあるお客さんは旅館に来てくれるということで熱川市全体が潤っているというような発言があった記事もちょっと読んだこともあります。そういったことも含めて、新たなる公的施設というものがつくられていった場合に、旅館業は、今は敵対視するような感覚でしょうけれども、今後共存の可能性というのはあるのかないのか、その点を聞かせていただいて、多分時間内で、私の質問を終わらせたいと思います。
針谷参考人
宿泊施設というのは回転率が非常に悪いのです。グリーンピアは、二千億かけたのに百億ぐらいしか年間売り上げ、収入がありません。ですから、同じ公的資金をかけて、活性化する度合い、お金が回る度合いというのは非常に悪いのです。我々でも、かけた度合いの半分ぐらいしか、十億かけて五億ぐらいの売り上げしかありません。官ですと、それがはるかに悪いのです。
私の近くに長浜というところがあるのですが、ここは年間百五十七万人、黒壁という施設に集まっています。市がかけた金はわずか一億四千万です。一億四千万しかかけていないのに百五十七万人集まったのです。町を活性化したいのなら、公営宿泊施設をつくるというのは非常に選択肢としてよくないですね。もっともっといい選択肢がいっぱいあります。
それと、我々の方がど真剣にやはり何とかお客さんを集めようと思ってするわけですから、我々が一軒ふえる方が、二軒ふえる方が、公営宿泊施設よりもど真剣に、一生懸命やりますから、活性化するのじゃないかなというふうに思っています。
赤羽委員
どうもありがとうございました。
針谷先生の、本当にみずから経営に大変御苦労されている最後の御意見、貴重な御意見、ありがたく承りました。
きょうは三名の方、本当にどうもありがとうございました。また今後ともよろしくお願いいたします。
以上でございます。
原田委員長
次に、米津等史君。
米津委員
自由党の米津でございます。
今赤羽委員からもお話ありましたように、私も、公的宿泊施設と民間宿泊施設が共存共栄していくというような視点が大切なんではないかなというふうに思います。
針谷参考人から今お話ございましたけれども、ぜひ同じように、公的宿泊施設と民間宿泊施設が共存共栄し、利用者の選択の幅が広がるというふうなことから、これからの望むべき将来像について岡本参考人に御意見を伺っておきたいと思います。
岡本参考人
私は共存共栄は可能だと思います。
先ほどの奥野先生の御発言をお伺いしますと、市場の失敗というのがもしあるとすれば、そこに公的宿泊施設の存在の意義があるわけでございます。
先ほどユースホステルの例を申し上げましたが、これはもう既にございますが、そして機能しておりますけれども、先ほど家族休暇村というのを例として御紹介申し上げました。家族は今なかなか旅行ができない。所得的にもできない。したがって、家族を対象にした保育所つきのそういう施設があれば、若い夫婦が子供を連れて安心して旅行に出かける。そういう経験が、ああ、子供のときにいいところに行ったな、あそこはいいところだったというような思い出で、大人になったときにその地域にまた来る。そして、そのときは民間の立派な施設を利用すればいいんで、そういう形で共存共栄というのは可能ではないかなというふうに思っております。
それから、もう一つついでに関連して申しますと、宿泊だけをやるというのはなかなか、その理念、目的を正当化するということは、よほど厳密なチェックをいたしませんと難しいかなというふうに実は思っております。宿泊単機能型、宿泊だけというのはですね。
しかし、そのほかに、十分に観光体験の中身を豊かにするためには、豊かな自然環境の中で遊びたい、いろいろな野外レクリエーションを楽しみたい、そういうことになりますと、これは非常に莫大な投資が必要になってくるわけでございまして、これは公的な部分に依存せざるを得ない。
したがって、そういう野外レクリエーション施設を十分に持って、しかし、宿泊機能は最低限のものに限定する。家族対象あるいは障害者、そうしたところへ限定して、普通の人がお泊まりいただくものは民間に任せる、そういうすみ分けだって可能だろうと思いますが、ケース・バイ・ケースでいろいろなケースがあるのだろうと思いますけれども、私は可能ではないかなというふうに思っております。
米津委員
今岡本参考人のおっしゃったお考え方に対して、最近の流れは非常に厳しくなってきているんではないかなというふうに思います。
岡本参考人からいただいた資料の三ページにも、「民間企業だけでは「すべての人が旅をする権利」を行使できないことの確認が必要」だというふうにおっしゃっておりますが、これがどのように確認をしていったらいいのか。一番効果的というのでしょうか、非常にわかりやすいようなメッセージの伝え方、それについてちょっと御意見を伺いたいと思います。
岡本参考人
これはやはり対象に制限を加えるということが非常に重要だと思いますね、例えば所得制限を加えるとか。先ほどの家族休暇村の場合は、所得の証明書を提出して、それによって料金が違うというような運用をいたしております。したがって、対象を厳しく限定するというのが非常に重要だろうというふうに思っております。
米津委員
ありがとうございました。
針谷参考人にお伺いをしたいんですが、今岡本参考人からお話ありましたように、観光体験というのが非常に大切だと。今の利用者の方々に対するサービスの提供、それから今後の利用者の育成というふうな観点から今の観光体験というふうなお話が出てきたと思いますけれども、これについて、民間宿泊施設の代表というふうなお立場から、どのようにこれからのお客様の育成についてお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
針谷参考人
私の友人がフィンランドにホテルをこしらえまして、約半額が政府からの借り入れでございます。五年間黒字だったらそれは放棄ということになります。税制上の優遇もあります。
日本でも、土地をただで提供します、ここに施設をつくりなさい、固定資産税も免除しましょう、そのかわり料金はこれでしなさい、こういうおもてなしをしなさいということは、私は可能だと思います。この条件に合う人、だれか民間でやりませんかということで、手を挙げた人がやるということにすれば、非常にコストの方は少なくて、それで先生のおっしゃるような体験型のものも、枠をはめて手を挙げてということで広く募集してやるということは民間で十分可能だし、その方がはるかに効率がよくて、オープンで、公平だというふうに思っております。
米津委員
ありがとうございました。
奥野参考人にお伺いをしたいのですが、社会保険制度の屋台骨が揺らぐ中で、どの範囲までなら公的資金を使ってもいい、あるいは悪いというコンセンサスづくりが非常に重要になってきていると思います。ただ、このコンセンサスづくりは、行革でも同じだと思いますが、非常に難しいことだということで、諸外国の例も含めて、このコンセンサス形成の効果的な具体例についてお教えいただきたいと思います。
奥野参考人
先ほどお話をしました行政改革委員会官民分担小委員会の判断基準というのが一つだと思うのですが、ただ、そうはいいましても、地方の方とか地域の方でどうしてもこういう事業をしたいというようなケースも出てくるし、先ほどから問題になっているような福祉の関係でどうしてもこういう事業をすべきだというようなケースも出てくると思います。
そういうときに、私の意見は、そういう事業をする、例えば福祉事業をするのだったらば、本当は福祉の保険というものがありますから、介護保険とか、そういう仕組みできちんと対象を明確にして、その上で公的な負担というものがどれだけなのかということをきちんと明らかにする。それが先ほどから申し上げております会計をはっきりさせなさいということなんですが、その上で、そうすると国民一人当たり幾らの負担でこういう事業が行われているかということがわかる。それを、これは民主主義の国ですから、国会であるとか、場合によっては選挙を通じて、国民が、そういう事業をこれだけの国民負担でやることは賛成か反対かということを民主的に決められる。そういう意味での透明性を高めるというのが理想ではないかというふうに考えます。
米津委員
ありがとうございました。お三方の参考意見、大変貴重な御意見を賜りまして、私どもの今後の活動に生かさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
原田委員長
次に、辻第一君。
辻(第)委員
私は、日本共産党の辻第一と申します。
きょうは、お三方の参考人にはお忙しい中御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴いたしました。ありがとうございました。
公的宿泊施設のあり方、そういう中で、先ほど来、公的宿泊施設が民業圧迫をするという問題でありますとか、あるいは赤字の問題、そして赤字に対しては結局公的資金あるいは税金でそれを賄っていくという問題、あるいはまた天下りの問題など、いろいろと否定的な問題も私ども勉強をさせていただきました。
そういう否定的な問題については、それぞれ解決の道を進めなくてはならないというふうに思うわけでございますが、そういう中で、公的宿泊施設が民業圧迫をするという御意見がありました。私も、あちこち観光地に行きますと、非常に厳しい状況だなというのを改めて最近痛感しているわけでありますが、そういう一方で、国民の生活も厳しい。
そういう中で、公的宿泊施設は、その安さなども含めて、やはり根強い支持もあると思うのですね。公的宿泊施設と申しましても、性格はさまざまございますし、民間の宿泊施設であれ、公的宿泊施設であれ、消費者のニーズといいますか、サービスがよくて適正な料金であれば宿泊者が集まるのではないか。この問題を考えるときには、まず観光の消費者といいましょうか、国民が何を求めているのかということではないかと思うのですが、この点について、お三方の参考人の御意見を伺いたいと思います。
針谷参考人
確かに、公営宿泊施設は半額、平均七千円ぐらいですね。ごっぽり公的資金がつぎ込まれているから安いのは当たり前でございます。もしもそういうことがぜひとも必要だということになれば、先ほど言いましたように、民間の施設に一泊二食七千円でやりなさい、そのかわり、料金を縛るかわりにこういうふうな特典を与えましょうということで、私は十分に成り立って、その方が効率がいいと思います。
民間の施設においても今非常に厳しいこともあるのですけれども、ペンションとか低価格の旅館とか、それからビジネスホテルとか、いろいろな業種、業態が出てきまして、かなりの部分がカバーできていると思います。公営宿泊施設も一万六千円というような施設もできています。民間で六千円、七千円という施設もいっぱいあります。ですから、公営宿泊施設の出番はもう終わったというふうに思っております。
奥野参考人
おっしゃるとおり、良質で低料金の施設であればお客が集まることは事実であります。ただ、その結果いろいろな、赤字が発生したり、累積損失が発生するということがあるわけですね。
これは、きょうの主題の公的施設と少し外れますけれども、例えば簡保事業であるとか、郵貯事業であるとか、年金とか、年金もある程度そうだと思うのですが、そういう公的な活動をやって、お客が集まってそれでうまくいっているように一見見えても、こういう金融ビジネスというのは基本的にリスキーなわけですね。そういう金融ビジネスで集めてきたお金を使って、こういうところにお金をつぎ込んで赤字が生まれてきて、事実上不良資産化する、そうすると、今の銀行のように倒産する可能性があるわけですね。
民間だったら、倒産して株主がその損失をかぶってくれる、あるいは債権者が損失をかぶってくれるということで話が済むわけです。国がそれをやっていると、これは国の事業ですから、国をつぶすわけにいかないのですね。そこで、最終的には納税者に、そういう事業の失敗、金融のリスクに基づくさまざまな損失、それを国が負担せざるを得なくなる、これは最終的に国民にツケが回るわけですね。
ですから、そういう意味で、官がやる必要がないものは官がやるべきではない。幾ら良質であって安いものができるとしても、必ずリスクがつきまとうわけですから、国民の将来のリスクにつながるわけですから、それはやはり民に任せるべきではないかというふうに私は思います。
岡本参考人
国民は廉価な宿泊施設を求めております。最も廉価な宿泊、これは施設とは申しませんが、空間は何かと申しますと、野宿でございます。野宿に限りなく近い宿泊空間というのがオートキャンプ場でございます。したがって、今オートキャンプ場が非常にふえております。国民は、そういう意味で、廉価な宿泊施設を求めているということですね。
ただ、問題は、公的宿泊施設が廉価である。しかし、廉価であるのはだれかがコストを負担している、そしてその結果御本人は廉価な宿泊施設を享受している。その場合は、そこに合理性といいましょうか、国民が納得できる条件がなきゃいかぬですね、御本人がほっておいたのではとても旅行などできないというようなお立場にあるとか。ですから、そういうことがきちんと了解されなければ、何かよくわからないけれども、とにかく安い宿泊施設があるからとにかく便利やということだけではぐあいが悪いというふうに私は思っております。
辻(第)委員
もう残りの時間が少ないのですが、同じようなお尋ねになると思いますが、岡本先生にお尋ねをいたします。
民業圧迫の問題など、あるいは経営や運営の問題、いろいろあるわけですけれども、公的宿泊施設はどうあればよいとお考えなのか、もう一度お伺いしたいと思います。
岡本参考人
私は、公的宿泊施設には限りませんですけれども、仮に宿泊施設というふうに考えた場合、例えば青少年には、国が補助して廉価に、大いに自然と触れ合ってほしい、旅行してほしい、そのためにユースホステルがあるわけですね。それから、若い家族にも、子供連れが大いに安心して旅行を楽しんでほしいということでフランスの家族休暇村がございます。この種のものは、公的なものとして国民の理解を得られるのではないだろうかというふうに思っております。
ただ、民間企業が幾らでも提供できるようなものを公的に提供するということは認められないというふうに考えております。
辻(第)委員
どうもありがとうございました。終わります。
原田委員長
次に、保坂展人君。
保坂委員
社会民主党の保坂展人です。きょうは参考人の皆さん、ありがとうございます。
まず、針谷参考人にお聞きいたしますけれども、大変分厚い資料で、私も昨日読ませていただきましたけれども、経営の難しい大変な時代の中でこういうものをつくられたということで、敬意を表したいと思います。
私もちょっといろいろ調べてみて、例えば、民間の皆さんのこの問題にかかわる運動の中で、声を広げて、こういう問題があるんだということで本日の審議もあると思うのですけれども、ここに秋田魁新報というのがあります。これは秋田でのことなんですけれども、民業圧迫だという皆さんの運動に対して、県の町村会が、県観光連盟への負担金拠出を当分の間見合わせたい、こういう運動は不愉快だというようなあつれきが起きているという記事が目にとまったのです。これは秋田で特別起きていることなのか、あるいは各地で、例えばまだまだ計画中で、やはり集客もしたいし話題づくりもしたいという自治体の首長の意向もあったりしてこういったことがたまたま秋田で起きたのか、今その辺の状況がどうなっているのか、お答えいただければ教えていただきたいと思います。
針谷参考人
御指摘の点は秋田だけでございます。
秋田は本当にひどい状況でございまして、経済の悪いこともありまして、市町村が積極的に公営宿泊施設をつくっているという状況です。それで、かなり経営的にもよろしくないわけです。それと、その影響で旅館業がどんどんつぶれております。先ほどの三千二百円というのも、サンルーラル大潟という秋田の施設でございます。本当にひどい状況です。
しかも、市町村がつくる理由の一つとして、天下りといいますか、OBがその会社に行くという実態があります。そのために市町村は、自分の行き先がなくなるということも一つの理由に挙げているようでございます。
保坂委員
今その三千二百円のケースを出していただきましたけれども、そうすると、県の町村会の会長の方は、また大潟の村長さんでもいらっしゃるのですね。観光連盟ですから、観光全体の振興というと公的宿泊施設への集客も含むわけですから、余りにもこれは――こういうような見合わせるというのは今も続いているのですか。もう少しこれは大問題になっていい問題かと思うのですが、実情をもう少し教えてください。
針谷参考人
県の観光連盟の会長が佐渡谷という旅館組合の理事長なんです。
先ほど言いましたように、町村会の会長が大潟村ということで、三千二百円の件も含めましてサンルーラルというのは本当にひどい状況なので、いろいろ抗議を申し込んでいるので、そこら辺のところが感情的になったという面がかなりあるというふうに思っております。だから、町村会の言うのは、旅館組合の理事長が観光協会の会長をやめるまで拠出をしない、こういうほとんど嫌がらせに近い状態だというふうに理解をしております。
保坂委員
それでは次に、奥野参考人に伺いたいのです。
御意見の中にもありましたけれども、本委員会の求めに従って会計検査院からこういった報告、稼働率もよくないし多々問題があると。
基本の基本のところなんですけれども、例えば土地建物の取得でありますとか、あるいは建物の修繕あるいは増築、建てかえ、こういったものは国の特別会計であって、ここは普通の民間の常識とは大分違うのですけれども、それはそれが当たり前となっていて、しかもその運営に責任を持っているのが例えばさまざまな特殊法人。それで、特殊法人がまた財団法人に投げたり社団法人に投げたりして、全然実態がわからないのですね。一体幾らの収支になっているのかというのを、昨日から取り寄せて同じ施設の横並びで見て、全部数字が違うのですよ。
我々の責任も大きいと思いますけれども、こういうことがなぜ放置されてきたのか。経営実態そのものが全くわからないという、これは深刻な問題だと思うのですが、もう少し御意見をお聞かせいただきたいと思います。
奥野参考人
やや繰り返しにはなると思うのですけれども、アメリカなんかがそのいい例だと思うのです。
まず第一に、基本的にこういうことをチェックする会計検査院であるとか行政監察局とかいうのが行政側にあるわけですね。内輪同士でチェックをしている。それから、問題意識として、本当に国民のためにという形じゃなくて、法律にのっとっているかどうかということだけでチェックをしている。物すごく形式的な、機関的なチェックしかしていないわけですね。だから、会計検査院なんかでも、法律上のことに関してはちゃんとやっているかどうかというようなことしか、失礼な言い方ですけれども、やっていない。それをもっときちんと、国民の立場から実態を暴くということをするためには、行政に任せておいてはだめだというのが私の認識です。
基本的にはやはり議会の側が、アメリカの場合には、会計検査に関しても行政監察に関しても議会の側に非常に大きな機構を持って、非常に大きなスタッフを持って、しかもこの人たちはある種の特権を与えられている、つまり十年間とか二十年間とか首にならない、そういう特権を持っていてそういうチェックをしている。そういう仕組みというものがあって初めてチェック・アンド・バランスということが機能するのではないか。
そういう意味で、基本的にやはり行政に任せ過ぎている、ぜひ国会の先生方にもう少し頑張っていただきたいというのが、むしろ私の基本認識でございます。
保坂委員
次に岡本参考人に、ソーシャルデモクラットですからソーシャルツーリズムについてお伺いしたいと思います。
やはり国民があるいは青少年が気軽に泊まってさまざまな交流体験をするという意味で、公的宿泊施設ということが全部いけないのだということではないと私も思うのですね。
ただ、余りにも経営実態等は不明で、責任も所在がどこにあるのかわからない。それからさらに、今一挙にこういう数字が明らかになってきますね、いわば隠し不良債権というか。という中で、例えばグリーンピアなど、地元の雇用に与える影響もかなり大だと思います。これは情報公開して、透明化して、いわばうみを出しながら、先生のおっしゃるNPOであるとか透明なガラス張りのルールで再建していくという可能性、道はどのくらいあるのか、お考えを伺いたいと思います。
岡本参考人
もう委員御指摘のとおりだと思います。だれに対して、何のために援助の手を差し伸べるべきかということを大いに公開をして、国民の理解を得るという手続がなければ、ぐあいが悪い。
しかし、その可能性は私はあるように思います。
と申しますのは、もう旅行するということは、一部の富裕階級だけがすればいいというようなことではございません。もう物も十分手に入ったということでございますから、これからの日本はサービスの時代、大いに旅行をして生活の豊かさを享受するということをだれしもが希望しているわけでございます。冒頭で私、意見を申し上げましたように、ただ旅行はできる人だけが楽しめばいいということではない、旅行の楽しみを国民のすべてに享受してもらうというのは国民一人一人の義務だというふうに考えれば、そういう、ガラス張りにすれば公的な施設が存続していく可能性はあるというふうに私は思っております。
保坂委員
ありがとうございました。お話を伺って、問題の深刻さと、また当委員会は大変重い役割を負っているということを改めて認識いたしました。
ありがとうございました。
原田委員長
参考人に対する質疑はこれをもって終了いたします。
参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、私から厚く御礼申し上げます。
どうぞ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。
午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十二分休憩
午後一時一分開議
原田委員長
休憩前に引き続き会議を開きます。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本件調査のため、本日、参考人として雇用促進事業団理事長七瀬時雄君、年金福祉事業団理事長森仁美君、簡易保険福祉事業団理事長五十嵐三津雄君及び同理事神鳥矩行君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
鴨下委員
自民党の鴨下一郎でございます。
午前中に、旅館三団体協議会公営宿泊施設等対策本部長の針谷さん、それから東大の経済学部の教授でいらっしゃる奥野さん、それから立教大学の観光学部長の岡本伸之参考人、この三人の御意見を伺ったわけであります。
私が非常に印象深く伺いましたことは、針谷さんがおっしゃっていたように、公営宿泊施設に関しましては、ある意味で、時代的な背景を含めて、役割は終えた、こういうようなお話がございましたけれども、私もおおよそのところでは全く同感でありました。そして、まずその一番の根拠としては、さまざまな地域で、言ってみれば民業を圧迫している、むしろ過剰なサービス、そして低価格の設定によって、極めて民間の旅館等を圧迫している。このことにつきましては、私は本当にそのとおりだというふうに思います。
ただ、その後に岡本伸之参考人がおっしゃっていたことに多少賛同する部分がございますので、その点についても多少触れたいと思います。
それは、要するにソーシャルツーリズムというような観点がもう一つ必要なんだということでありまして、単に、例えば赤字である公的宿泊施設はすべてつぶせばいい、こういうようなことでは多少問題がある。むしろ、国民にとって、そして旅行をしたいと願うだれもがある意味で宿泊できる、こういう施設を公的セクターもしくは民間セクターを含めて用意していく、これが我々の役目なんだろうというふうに思います。
そういう意味で、私はかつて、十年ぐらい前ですけれども、岡本参考人がここで書いておられますスイスのRECAという、言ってみれば旅行クーポン券を実際に実行しているところをベルンまで行って見学してまいりましたし、それから、フランスで、ソーシャルツーリズムを目的とした、言ってみれば長期滞在型の保養施設で、これはドゴールが肝いりでつくったラングドックルシオン、こういうところもずっと視察してまいりまして、ヨーロッパのそういう意味での公的もしくは民間の保養施設というのは非常に充実しているな、こういうような印象を受けたことがございます。
そういう意味で、きょうは、公的宿泊施設がすべて役割を終えたのかどうかということについては多少疑問の点も感じながら、なおかつ民業は圧迫しない、こういうようなことでいろいろと、きょう御出席の参考人にお話を伺っていきたいというふうに思います。
まず第一に、これは平成九年の六月六日、閣議決定で、特殊法人、特に年金福祉事業団に関しましては、「大規模保養基地業務からは撤退し、」こういうような項目がございますけれども、この点につきまして、まず、この大規模年金保養基地の概要につきまして、多少手短にお話をいただけたらというふうに思います。
森参考人
年金福祉事業団が設置、運営をいたしております大規模年金保養基地でございますが、昭和四十七年、一九七二年に設置の構想が出されまして、今日までその設置と運営をやってまいっております。
現在、全国に十三基地、私どもの整理では十一カ所十三基地ございます。一基地大体百万坪程度の広さを持っておりまして、施設概要といたしましては、いろいろな複合的な施設を目指しております関係上、プールでございますとかテニスコートでございますとか運動施設のほかに、宿泊施設もあわせ持っております。
年間の利用者は、日帰り客、施設を御利用になる方を入れまして、年間約二百二、三十万人、最近ちょっと減っておりますけれども、十三基地合計二百二、三十万人の方が御利用でございます。うち宿泊者は大体三分の一程度の方が宿泊される、六十五万人程度ということでございます。
設置は私どもがやっておりますけれども、具体の運営は道府県に九カ所、それから、一つ協会、法人がございまして、法人に四カ所、運営委託をいたしております。私どもが建物、土地等の取得をいたした上でその人たちに運営を委託しているということでございまして、損益はすべて運営者に帰属している、概要はそういうところでございます。
鴨下委員
言ってみれば撤退するというようなことでありますけれども、例えば地域の状況等、それから地域等の経済活動でも、ある意味で密接になってしまっている部分もあるんだろうと思いますし、さらに雇用の点もあると思います。それから、現在の状況として、撤退の方向として、例えば地方自治体の受け入れ等についてのさまざまな、受け皿といいますか、そういうような問題につきまして現状はどういうふうになっているのかをお聞かせください。
矢野政府委員
お答え申し上げます。
御指摘のように、平成九年六月に撤退ということが決まったわけでございます。グリーンピアというのは十三ありますけれども、地域の実情によってさまざまでございます。
しかし、私どもとしましては、これまでの経営からして、地元の自治体、具体的には道とか県に引き受けていただきたい、あるいはそれが無理であれば公的なところで受けていただきたい、こういうことで、今関係の地方公共団体と御相談をしておるわけでございます。今のところまだ具体的に、ここを必ず引き受けるからといって手を挙げていただいているところはないわけですけれども、二、三、前向きに対応していただいているところもございます。
そういうことで、私どもとしましては、例えば割引措置を講ずるとかいろいろ具体的な、価格とか条件を煮詰めまして、何とか地方公共団体で受けていただく方向でこれからも努力していきたい、こう思っております。
鴨下委員
撤退をするときに地方公共団体が引き受けてくれなかったらどうするのかという話は、まあきょうは時間がありませんから議論はしませんけれども、私は、ソーシャルツーリズムという意味においては、保養基地としては非常に良質な基地なんだろうというふうに思います。ただ、それの経営効率が非常に悪い。それが、ひいては年金等のさまざまな負担になってしまう、こういうようなことになったら困るわけでありますから、撤退をするのは速やかにやっていただきたいと思いますけれども、もし地方公共団体がだめな場合には、例えば公設民営というような考え方があるのかどうか、これも簡潔にお答えいただきたいと思います。
矢野政府委員
地方自治体で受けていただけない場合ということでございますけれども、その場合には、民間を含めて幅広く相手を探す、こういうことになろうかと思います。
ただいまお話がございました公設民営という点につきましては、実は今のグリーンピアがまさしく公設民営でございます。運営につきましては、四つを財団法人年金保養協会に今委託して運営しておりますし、残りにつきましては、都道府県にお願いをして都道府県が財団なり株式会社をつくって運営をしておる、こういうことでございまして、公設民営形態で現在でも運営されているということでございます。
鴨下委員
それは公設民営になるのかどうかというのは私は甚だ疑問でありますけれども、とにかく時間がありませんので、次に参ります。
もう一つ、勤労者リフレッシュセンター、スパウザ小田原というのが、非常に豪華な立派な施設でありまして、私もつい最近、一回見学に行ってまいりました。宿泊をしたんですけれども、確かにいい施設で、こういうところに一週間も泊まってのんびりできたらいいなと思うんです。ところが、利用料は一泊一万七千円ぐらいという話らしいですけれども、そうなると、長期保養の基地としては多少高過ぎるかなというふうに思いますし、さりとて、今度は周辺の民業を圧迫しかねないという意味においては、余り安い価格を設定するというのも、これもどうか。
こういうような意味で、あそこのスパウザ小田原というのをきちんと運営していって、採算もある程度いい状態で、なおかつ良質な保養施設としてのサービスを提供できるというのは、これはもう非常にパラドックスで難しいなというふうに感じて帰ってきたわけでありますけれども、このリフレッシュセンターは今後どういうふうに運営をしていくのか、そのことにつきましてお考えをいただきたいというふうに思います。
渡邊(信)政府委員
今御指摘のありましたスパウザ小田原は、平成元年に設立の決定をいたしまして、昨年三月にオープンした施設でございます。これは、我が国は大変高齢化が進展しておりまして、勤労者の職業生活も長くなっていますし、労働時間の短縮というふうなことでゆとりも出てきている、こういったことから、在職中から体力チェックとか健康づくりを行おう、そのための長期滞在型の施設として設立をされたものでございます。今おっしゃいましたように料金的には、平均が一泊二食で一万七千円というふうに、近隣の施設の料金も勘案しながら設定をしておりまして、かなり高いかなという気もするわけでございます。いずれにいたしましても、これはオープンしたばかりで、現在は利用者は順調に、計画どおり伸びておるようでございます。
ただ、先ほどの平成九年の閣議決定によりまして福祉施設の新設は行えないということで、労働省といたしましても、平成十年度、今年度からこういった福祉施設の新設は取りやめておりますし、さらに、この国会に、雇用促進事業団を廃止して雇用・能力開発機構をつくるという法案を提出してございます。この法案の中では、既につくりました福祉施設については譲渡等を行うというふうに規定しておりまして、その譲渡等がなされるまでは新しい法人がその管理を行うことということにしておりますので、これからは、もし法案が成立いたしますればそういった方針で臨みたいというふうに考えております。
鴨下委員
このスパウザ小田原というのは、普通のホテルよりもむしろ豪華な施設で、フロントのロビーなんかも全部大理石を敷いてあったり、豪華なプールがあって、そのプールに何人か利用者はいましたけれども、もうほとんどがらがらの状態だったですね、私が行ったときには。ですから、利用者にとっては大変ありがたいです。込んでいないわけですからリラックスできるわけでありますけれども、その負担をどこかでだれかがしているのかと思うと、私は多少暗たんたる思いがしたわけでありますし、先ほども申し上げましたように、ではこれを安い価格でサービスを提供しようということになると、周辺の、あれはたしか熱海に行く途中でありますから、その辺のさまざまな旅館、ホテル等に対しての民業の圧迫ということにもなりかねない。
そういうことで、これをどういうふうに利用していったらいいかということの一つに、先ほども申し上げましたけれども、例えばある程度の公的な補助をつけながら運営はできるだけ民間に任せていくというようなことで、例えば民間のさまざまな会社、それから、先ほどはNPOという話もありましたけれども、あらゆるところに、例えば入札等でどこが一番経営効率を上げていいサービスを提供できるか、このチェックを皆さんがしていくようなシステムというのはできないものでしょうか。
渡邊(信)政府委員
先ほど申し上げましたように、労働省、雇用促進事業団で設置しております福祉施設につきましては、新法が通りますと譲渡等を図るということにしておりまして、その方法といたしましては、これは地元自治体の協力を得てつくっている施設が多いものですから、できるだけ自治体への譲渡等を考えたいと思いますが、今先生御指摘のような方法も含めて検討したいというふうに思います。
鴨下委員
では、年金局長も答えてください。要するに、ある程度補助金をつけて、そしてその施設を民間に入札させて運営させるというアイデアはどうでしょうかという話です。
矢野政府委員
今、グリーンピアにつきましては撤退ということが決まっておるわけでございます。私どもは、できるだけ早く撤退をしたいということで、今、地元自治体を中心に相談しているわけでございます。
運営につきましては、今のところ、先生がおっしゃったようなやり方というのは、これは恒久的にずっと続ける場合にはそういうアイデアというのも非常に貴重かと思いますけれども、私どもの場合は、もう撤退が大事だ、最優先だ、こう思っておりますので、撤退を迅速に進めるということでこの問題について対応していきたいと思っております。
鴨下委員
撤退といっても、私は、例えばスパウザ小田原を小田原市が引き受けるとも思えないし、それから神奈川県が、では、わかりましたと言って受けるともなかなか思えないわけでありますから、もっと現実的な対応も含めてぜひもう一度考えていただきたい。
時間でございますけれども、とにかく我々は、ある意味でだれでもが利用できる施設を用意するというのも一つの目的でありますし、もう一つは、国民にいろいろな意味での、税それから保険料等の負担をできるだけかけないというのも我々の仕事でございますから、この二つの大きな命題を解決して、最終的にどうするかという話の中では、多少公的施設も必要なのかな、地域の実情においても必要なのかな、ただ民間がかわり得るところ、もしくは民間でもやれるところについてはできるだけ民間に任せていく、こういうような姿勢が重要なんだろうと思いますので、それを最後に申し上げたいと思います。
以上です。
原田委員長
次に、石井紘基君。
石井(紘)委員
今回会計検査院に公的宿泊施設の状況ということで決算行政監視委員会が調査を依頼した中には入っていないんですが、環境庁の環境事業団の問題を最初に申し上げたいと思います。
環境庁だから、環境を保護する、ないしはよくする、そういう事業をやっているんだろうというふうに一般には思われがちなんですけれども、この環境事業団の理事長等の役員はもちろん環境庁からの方がやっておるわけですが、環境事業団が、岡山県の玉野市で王子アルカディアリゾート事業というのをやっておる。
これは、玉野市などが出資者であるところの第三セクターの要請で建設したんだというふうに環境庁では言っておるようでございますが、この事業は、約十八ヘクタールの敷地に、海に面した大変すばらしい、景勝の地でありますが、ここに、総事業費約四十億円をかけて、さらにホテルの内装工事、内装工事は第三セクターにやらせる予定だったようで、この事業費は二十三億円と言われておりますが、こういう大規模なホテル建設、開発事業を行ってきたわけですね。
そこで、四十億円かけたんだけれども、その後、工事が進まないで放置されている。環境庁は困ってこの施設を、昨年、二十億円で環境事業団から買い上げたんでしょうかね、そしてさらに七十億円をかけて、内部の改装とかして、環境教育施設に転用するという計画を立てたそうであります。まさに大変な、すばらしい景色のところに環境破壊のような状態になっているわけですね。これは、一体環境庁としてはどういうふうにするおつもりなんでしょうか。
丸山政府委員
お答え申し上げます。
ただいま先生お話しの事業は、大分前から、リゾートホテルを建設して、いわば受注建築をして、申し出者の方が、三セクでございますが、引き受けをしてリゾートホテルを開設するという事業が中断をしたままでございます。地元にとりましては、ここは瀬戸内海国立公園の大変風光明媚な場所でございますので、大変利用をしてまいりたいということで、この活用方策も検討しているやに聞いているところでございます。
今お話がございました環境教育施設等につきましては、現在はそのようなことを検討しておりませんで、むしろ地元としての活用方策を検討するということで進んでいるところでございます。環境事業団が、地元市も加わった三セクに対する、いわば最大の債権者でございまして、その活用方策につきましてもアドバイスいたしておるところでございます。
いずれにしましても、この施設を持っている所有者が今後どう活用していくか、また地元がどのようにそれに協力していくかということで、早期の活用を図れるように私どもとしても協力をしてまいりたいと考えております。
石井(紘)委員
長期にわたってこうやって放置されてあるわけでありますし、岡山県にしても玉野市にしても、全国的にも大変財政状況の厳しいところでありまして、これをいつまでも待っているということが許されるのかどうか。環境庁としては、この施設を壊してしまって、もとの自然に戻すという考えはないんですか。
丸山政府委員
施設を仮に撤去いたします場合には、恐らく国の代執行ということで行うことになろうと思いますけれども、三セク自身に資力が乏しいために、その費用が回収不能になるおそれがございます。
この施設につきましては、利用拠点として、先生お話しのように大変風光明媚な拠点でもございますので、地元からも有効活用という声が大変強うございます。私どもとしては、そういう方向での具体化ということについて協力してまいりたいと考えております。
石井(紘)委員
風光明媚なところだからそこを開発するという考えは、環境庁の御答弁としては私はおかしいと思うんですね。これはもとに戻して自然な状態にするという方向で、もちろんそういうふうにすれば、さらに費用もかかるし、またこれまで投下した何十億というお金はむだになるわけでありますが、その責任はそれはまた別の問題でありますので、ぜひ、自然環境という側面と、それから自治体に負担をかけないという面とで環境庁は真剣に御検討をいただかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
次に、簡保の施設について申し上げます。
簡易保険というのは大体三千万人ぐらいの人が加入しているようですね。そうすると、相当一般的な、庶民のといいますか、国民的な保険事業だ。そういう中で、少々の施設をつくってその加入者へ還元をするんだというようなことを言っても、これは切りがない話だと思いますね。
そこで、簡保の施設をつくるに当たっては、簡易生命保険特別会計からお金を持ってきているわけですね。大体、出資金と交付金と合わせて年間何百億か、平成八年でいいますと出資金が百五十億、交付金が三百十億、九年だと出資金が九十億、交付金が二百八十億。こうしてこれをずっと累計で、トータルいたしますと八千億円を投下してきたわけです。こういう商売はおやめなさいよということを昭和五十八年の臨調答申で言われてきたわけですね。
この施設についても、経営はそれぞれ委託をしておる。
そこで、簡保事業団そのものをちょっと見てみますと、職員は二千八百十四名、そのうち本部の、事業団としてのもろもろの仕事をする人が百五十名。ということは、この百五十名を二千八百十四人から引いた人数、二千六百数十名になりますか、この人たちはすべてこういう保養施設、宿泊施設の業務に当たっているということなんでしょうか。つまり、この方々はホテル屋さんをやっておるということなんでしょうか。
五十嵐参考人
お答えいたします。
約二千八百名の職員がおりますが、今、簡易保険福祉事業団で行っております加入者福祉というものにつきましては、いわゆる宿泊的な保養センターのほかに、加入者ホーム、さらには、パイロットプランでございますが、介護型の加入者ホーム、老人ホームのようなものでございます、さらには総合レクセンターあるいはレクリエーションセンター、そして健康診断を行うような健診センター、さらには診療所というようなものがございまして、そういったところにそれぞれの職員が簡易保険の福祉サービスの提供のために従事しているというのが実態でございます。
石井(紘)委員
そういう事業団をつくって、大部分の人がホテル業をやっておる。フロントサービスだとか施設の見回りだとか、そういうことに従事しておる。これは、何のために国がそんなホテル商売に多くの人員を割かなければならぬのかというふうに感じられるわけですね。
それからまた、今度は、郵政省の方の郵貯会館等がございますね、メルパルク等。これは財団法人の郵便貯金振興会というのが経営をやっておる、これも相当もうかっているようですが。
これは、理事長は松野さんという方で元事務次官、三名の理事は全員郵政省出身、監事も郵政省出身、三名の常勤の理事は全員が郵政省の出身、こういうことになっているわけですが、これは、いわば郵政省の天下り、再就職ということをかなり意図してやっている事業ですか。
松井政府委員
お答え申し上げます。
私どもの郵便貯金の普及のための周知施設として法に基づいて設置しておりまして、この運営に当たっておりますのは郵便貯金振興会でございますが、これは通例の財団法人ではございませんで、直接郵便貯金法に基づいて、その中で認可を受けて設立されたいわゆる認可法人と言われているものでございます。
まず、この施設が何のためかというお話でございましたが、先ほど申しましたように、郵便貯金会館等につきましては、郵便貯金の内容を国民の皆様によりよく理解いただきたい、そして郵便貯金を身近に感じていただきたい、そういうふうな周知宣伝施設として設置されているものでございます。
先ほど、天下りの話がございましたけれども、そういう目的に沿って国の経費をもって設置しておりますので、当然天下りのためにつくっているというものではございませんので、よろしくお願い申し上げます。
石井(紘)委員
それでは次に、雇用促進事業団の宿泊施設について申し上げたいと思います。
この雇用促進事業団も相当数の宿泊施設をお持ちでございます。七十一カ所ですか、この経営については事業団が都道府県に委託をする、そうすると、その都道府県がさらに公益法人にやらせる、こういう形です。この公益法人というのは、ほとんどそういうものを経営するためにできた第三セクターということになっているわけです。この公益法人が、それは地方自治体が出資をして、あるいは民間にも出資をさせてつくっているんでしょうが、独立採算になっておりますから、これは都道府県も大変だし、あるいは地方公共団体、これもなかなか、ほとんどが経営が思わしくありませんから、大変なわけですね。
直に経営をやっている施設は、勤労者リフレッシュ振興財団という財団法人、労働省の財団法人がやっておる。この役員は、理事長はもちろん労働事務次官、その前も労働事務次官、大体労働事務次官の指定席になっているようですが、そういうところにこれは委託ということでやっておる。
やはり、先ほどの簡保と同じように、この財源、要するに建設費それから維持修繕の費用、こういうものは特別会計から持ってくる、労働保険特別会計。この累計が二千億円になっておるということですね。当然、この経営については税金も固定資産税もかからないわけですね。あるいは、借地料とか増改築の費用もかからない、委託費用もかからない、修繕費も維持費もかからない、こういうものはみんな特別会計から持ってくる、こういうふうになっているわけです。
ここもまた委託先は、県に委託していないところですね。こういうところは幾つもありますが、これは勤労者リフレッシュ事業振興財団という労働省の財団法人、この財団法人の理事長は岡部晃三さんという元事務次官。専務理事、常勤理事は全員労働省の出身者。経営を委託されておる財団法人はほかにもありまして、勤労者福祉振興財団、日本勤労福祉センター、こういうようなところがそれぞれ天下り団体でございまして、これらが経営、管理をやっておるということになっておりますね。違いますか。
渡邊(信)政府委員
小田原のスパウザの運営の委託を受けております勤労者リフレッシュ事業振興財団は、常勤、非常勤の役員合わせまして二十名ですが、そのうち三名が労働省の出身者でございます。また、日本勤労福祉センターは……(石井(紘)委員「私が言ったことは繰り返さないでいいです、時間がない」と呼ぶ)わかりました。それぞれ経験、知識を生かして仕事をしていただいておりますが、できるだけ政府の方針に沿った人数にしたいと思います。
石井(紘)委員
私が申し上げたことを聞いていただければおわかりと思いますが、こういうあり方というものはそれでよろしいのかどうか。そのあたりはひとつ、国民の納得が私は得られないと思いますので、この経営、運営のあり方等についてぜひ真剣にお考えをいただいて対処してもらわなきゃいけない。
それから、こうした形での宿泊施設というものは、当然のことながら民間に対しても大きな影響を及ぼすわけでありますので、今これをどうしろと言ってもお答えがいただけないと思いますので、指摘だけをさせていただきます。
それで、これらの施設はなくすことになっておるわけですが、今後、地方公共団体にこれを引き受けろといったって無理なところが相当あると思うのです。あるいはほとんど無理かもしれないのです。方針を伺いたいのですが、どうせ余り見通しのある方針が出てこないと思いますので、時間の関係で省きます。
それから次に、今度は年金福祉事業団。この理事長はやはり環境庁の事務次官の森さん。これは特別会計から千九百億円を投下して、一カ所百万坪という広大な敷地に大規模保養基地を十三カ所つくった。中には五十万坪のものも四カ所ぐらいある。これは国から、特別会計から相当お金が入っておりますから、それが入っていなければ全部赤字なんですが、それを入れても九カ所は赤字である、こういう状態であります。
職員は千百十名おる。事業部は十三名だけで、ほかは全部ホテルの従業員だ。広い意味での従業員ですね、そういうことになっておる。それから、この委託先も年金保養協会という、理事長がやはり加藤さんという厚生省の次官ということになっておるわけですね。
これらに共通するのは、今まで申し上げてきたように、建築費はもちろんのこと、土地の買収から修繕から、あるいは管理の費用から税金から、もう全部特別会計から出てくる。いい施設だ、いい施設だといって民間と競争し合っておる、こういう状態。中にはもちろん競争していないところもありますよ。もちろん、地域地域によって、来てくれと言われて町の振興のためにといってやっているところもあるけれども、それは理屈であって、地域の振興というのは別に皆さん方の仕事じゃないんですね。厚生省やあるいは郵政省が地域の振興というようなことを目的にしているというふうには聞いたことがないわけでありまして、それは方便ですね。ですから、要するに余計な事業までずっと膨らませてきたということだと思います、基本的にはね。
もちろん、労働省の雇用促進事業団がやっているようなものの中には、必ずしもそうでもないものもあるでしょう。簡保の中でも、それは一〇〇%全部がそういうものだとは言いません。しかし、そういうことである。ここに特別会計でこういう予算を組んでくるということが一体どういうことなのか、これは大蔵省にちょっと見解を聞いてみたいと思います。
坂政府委員
特殊法人に対するそういった特別会計からの予算措置というのはいろいろあるわけでございますが、御指摘の公的宿泊施設の経営なども含めまして、すべての法人におきまして事務事業の合理化あるいは効率化を図るというふうに、平成七年の二月に、先生御承知のように閣議決定がございます。そういった閣議決定等を踏まえまして、私どもといたしまして、そういった予算措置につきましては抑制をしていきたいということで今までも努力をしてきたところでございます。
今後とも、特殊法人につきましては、その事業の社会的意義が低下しているもの、こういったものを廃止するとか、あるいは個別に法人の事業を見直していただくといったことを通じまして、一層の財政資金の効率的使用に努めてまいりたいというふうに私どもとしては考えているところでございます。
石井(紘)委員
時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
原田委員長
次に、谷口隆義君。
谷口委員
公明党・改革クラブの谷口でございます。
午前中の参考人が来ていただいての審議を聞いておりましても出てきたことでございますが、公的宿泊施設に関して外してはならないポイントが、私は二点あるんじゃないかというように思っておるわけでございます。まず一点は、民業への圧迫という観点を外してはいけない、私はこのように思っております。もう一点は収益性の観点でございまして、これは政府資金を投入するわけでございますので、償還可能性と申しますか、こういうような観点を逃してはいけない、このように思うわけでございます。
しかし、私は、この公的宿泊施設の運営に関する会計検査の結果の報告書をつぶさに精査をさせていただきました、一生懸命調べさせていただいたわけでありますが、どうもはっきりわからないわけでございます。
一つは、会計処理がまちまちになっておるという観点があるんだろうというように思っております。どうも見ておりますと、損益帰属者の収支に含まれない費用というのがあるようでございます。これは各事業団、各省庁まちまちでございまして、維持修繕費であるとか、固定資産税であるとか、土地の借り上げ料であるとか、物品購入費であるとか、森林維持費であるとか、これが上がっている事業団もあり、上がっておらない事業団もあり、またこれも、施設別になっておるのではないか、このように推測をされるわけでございます。なぜならば、本日の午前中の参考人のお話にもございましたように、本来なら収益性、採算性の観点で見ると、各施設別に損益が出ておらなければいけないわけでございますが、そのような資料が出ておらないわけでございます。
それで、私、一つ大変気にかかっていることがございます。それは国の方からお金を、資金を投入するわけでございますが、この交付金についての処理でございます。本日の参考人質疑の折に出ておりましたが、簡易保険福祉事業団の交付金に関しては、これが収入に上がっておるというようなことのようでございます。その他、雇用促進事業団、年金福祉事業団、当面この三事業団に対しての交付金がどういう処理になっておるのかを、まず御報告をお願いいたしたいというふうに思います。
〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
足立政府委員
簡保特会から簡保事業団に交付金が出ていることでございますが、最初に仕組みの話をさせていただきたいと思います。
簡易保険事業がその目的を達成するために、なるべく加入者の方々の健康の増進を図るということが大切でございます。これは、生命保険事業というものの性格からいたしまして、健康増進を図って、長生き、長寿をしてもらうということでございまして、そのために、実は簡保特会から交付金をもってその施設の運営を行うということになっておるわけでございます。
具体的に申し上げますと、平成九年度でありますと、交付金が二百九十五億でございます。内訳を申し上げますと、施設の運営に関する部分、それからいわゆる固定資産税あるいは不動産取得税といった租税公課に係る部分、そのほか、建物の減価償却に係る費用というふうになっておるところでございます。
谷口委員
いや、私が聞いたのは、これだけ答えていただいたら結構でございますから、交付金がどのような処理になっておるのかということなんですよ。だから、どうなっているのですか。交付金は収入に上がっているのですか。
足立政府委員
最初に申し上げました仕組みでございますので、収入の中に入れて、損益計算書、諸表をつくっておるところでございます。
谷口委員
その他、雇用促進事業団、年金福祉事業団。
渡邊(信)政府委員
雇用促進事業団の施設の一部には交付金が入っているものがございますが、これは収入のところに計上しております。
矢野政府委員
交付金は収入に計上されているということでございます。
谷口委員
だから、おかしな状況になっておるわけでございます。これは普通、民間の宿泊業者であれば、これは借入金でございますから借入金なり出資金なりに立つものでございまして、これは決して、収入に立つということはもう返済する必要がないということでありますから、こういうような処理が大体間違っておるわけですね。
ですから、この報告書において利益の状況、収益の状況を見ると、これが収入に入っておるので、どうもはっきりわからないわけであります。まず、この会計処理そのものを統一化し、比較をしていかないと、これはもう採算の観点でいくと全く比較にならない。正確な数字が出ておらないということをまず申し上げたいというように思うわけでございます。
それで今、簡易保険福祉事業団のお話をしましたので、簡易保険保養センターがあります。この簡易保険保養センターは稼働率が高いわけでございますが、収支率、収支率というのは収入に対してどれだけ支出の割合が多いかということでございますが、この収支率が高いわけでございます。これはどういうことかと申し上げますと、極めて人件費の比率が高い、こういうことであるわけでございます。稼働率が高いということは、結構利用の頻度が高いということでございまして、にもかかわらず収支率が高いというのは、これは収益性の観点からどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
足立政府委員
簡易保険の利用者は全国あまねくいらっしゃいます関係上、私どもの施設は、ある程度地理的に公平性を持って配置しておるところであります。したがいまして、個々の施設を見ますと確かに赤字、黒字といった問題はございますが、このような問題につきましてはトータルで考えるべきものというふうに受けとめておるところでございます。
谷口委員
何かわけのわからないような答弁なのですが、要するに、今申し上げたように、ポイントが二点あるのです。
これは、保険料をお支払いになった被保険者の資金をお預かりして、それを投入しているわけでしょう。ですから、むやみやたらにどぶに水を流すような対応はだめなわけでございまして、それはそれなりに被保険者の利便に供し、また回収可能性というか、償還可能性の観点からこれは大丈夫なんだというようなことでないと、これは大変大きな問題になるのではないか。
後でまた大蔵省の方にもその観点でお聞きするわけでございますが、きょう新聞を見ておりましたら、簡保の保険料が四月から平均三・三%上がる、郵政審の保険部会の答申でそのようになっておる。運用利回りが低下したことを受けて、簡保の保険料が上がる。これはしかし、簡保特会といいますか、そういう中をよくよく見ていくと、こういうような極めて非効率なわけのわからない金が出ていって、最終的にこれが掛けていらっしゃる保険料に転嫁しているということではないのですか、どうでしょうか。
足立政府委員
簡保特会といいますのは、加入者の方々の保険料をお預かりして運用しているわけであります。したがいまして、簡保事業といたしましては、保険事業、保険金の給付事業そのものも当然本来業務としてやっておるわけでありますが、加入者の方々の健康増進という観点から、一方で加入者福祉事業といいまして、交付金あるいは出資金をもって運用しておるところであります。
谷口委員
だから、これは私は当委員会でまた委員長に申し入れたいと思いますが、特別会計が極めてこれは不明朗になっておるわけでございまして、このあたりの実態を把握していく必要があるのではないか。今回の公的宿泊施設にかかわることだけではなくて、国の会計全般について極めて不明朗な対応になっておる。ここはもう大変問題意識を私は持っておりまして、今後また、そういう観点でもお話をしてまいりたいというふうに思っております。
データが出ておらないので、今のその答弁に対してのやりとりができないということでございますから、ぜひそのあたりは、これは私はまた後で申し上げますが、この報告書で見ると、ほとんど収益性が上がっておらないわけでございまして、そういう観点で申し上げておるわけでございます。
その次に、先ほどの質問にもあったわけでございますが、グリーンピアの問題でございます。
グリーンピアは十三カ所あるようでございまして、大体千八百億ぐらい資金をつぎ込んでおるというように言われております。それに対しましてどの程度の収益が上がっておるかという観点で見ますと、これも先ほど申し上げましたように、一施設ごとでしか書いておらないわけで、全体にどのくらいの収益が上がっておるのかというのは予測せざるを得ないわけでございます。
大体この収益状況を見ると、十三カ所で、収入ですね、損益ではなくて収入が、推測というか、一施設ごとに出ておる収入に十三カ所分を掛けると約百二十億ほどになるわけでございます。千八百億をつぎ込んで、これは利益じゃないですよ、収入が百二十億程度と仮にいたしますと、民間の企業では早晩経営破綻間違いないわけでございます。これはもつはずがありません。
私も以前経営指導をやっておった経験がございますが、民間の企業では、大体売り上げの倍ぐらいの借り入れを持ったら、その段階でなかなか厳しくなるわけでございます。これを見ておりますと十五倍ぐらいになっておるわけでございますが、そういう観点で御答弁をお願い申し上げたいというように思います。
矢野政府委員
この大規模年金保養基地、グリーンピアにつきましては、御指摘のようないろいろな問題があるということはかねてから言われておったわけでございます。
それで、これは前大臣、小泉大臣のときでございますけれども、このグリーンピアの取り扱いにつきまして、民間でできることは民間に任せるべきじゃないか、国が余計なことをすべきじゃない、それからまた、非常に収益が悪い、これは結局年金加入者の利益に反するのじゃないか、年金の金というのは年金加入者の利益のために最も有利に運用すべきなんだ、したがいましてこういったグリーンピア事業というのはやめるべきだ、こういう問題提起がございました。私どもも、こういった状況を見ますと、これ以上グリーンピアを続けるというのは、これは年金加入者の利益にならないのじゃないか、こういう判断をしたわけでございます。
したがいまして、このグリーンピアにつきましては撤退をするということを決めまして、地元自治体にまず受けていただきたいということで交渉を続けているわけでございます。
そういうことで、収益性云々につきましてはおっしゃるとおりだと思いますし、そういうことを踏まえて、私どもとしては、撤退、こういう決断をしたということでございます。
谷口委員
撤退するということで、九九年に廃止の予定のようでございますが、お聞きしますと、地方自治体に売却をするというようなことのようです。
それで、私は、そのことについてお聞きしたいわけでございますが、一つは、今の地方自治体に売却する、その進捗状況について御報告をお願い申し上げたいことと、今地方自治体に売却した場合に大体どの程度の、実現しておらない損、含み損と申しますか、これがあると考えられておるのか、この二点をお聞きいたしたいというように思います。
矢野政府委員
お答えいたします。
まず、進捗状況でございますけれども、地元自治体と累次にわたりいろいろな形で折衝し、交渉しておるわけでございますけれども、今のところ、明確に引き受けるということで手を挙げていただいたところはございません。ただ、二、三、前向きに御検討いただいておるところもございます。
これは、引き受けるということになりますと、具体的な条件というのが非常に重要な問題になるわけでございまして、価格面とか支払い条件、こういった面でより具体的な姿を提示いたしまして、これから本格的に交渉していきたいということで進めておるわけでございます。
それからもう一つは、どの程度の損が発生するかということでございます。これは、土地、建物、簿価でございますけれども、約一千四百億程度と見積もっております。
したがいまして、最終的には、幾らで売却できるかということによって、どれだけプラスになるのか、あるいは、多分損が発生すると思いますけれども、具体的な金額につきましては売却時点で明確になるわけでございますので、今の段階では何とも申し上げようがないということでございます。
谷口委員
御存じのとおり、地方財政は大変逼迫をいたしておるわけでございまして、例えば、当該所在しておる地方自治体が買わない、売却には応じないというようになった場合は、どのようにお考えでありますか。
矢野政府委員
お答え申し上げます。
私どもは、できるだけ地方公共団体が受け入れやすい条件を提示したいと思っておるわけでございます。例えば割引措置を講ずるとか、あるいは一括払いじゃなくて年賦払いでお支払いいただくとか、いろいろ条件をよく考えまして、何とか地方公共団体に受けていただきたいということで進めていきたいと思っております。
ただ、どうしても地方公共団体が受け入れられないということになりますと、これは、民間を含めて幅広く売却先を探さざるを得ないということになろうかと思います。
谷口委員
年金福祉事業団のグリーンピアについては、平成九年度まで大蔵省の資金運用部のコントロール下にあったわけでございます。私が申し上げたいのは、財投資金を年金福祉事業団に持っていくわけでありますが、そのときに大蔵省当局、これは資金運用部がどういう観点でこれを持っていったのか、この政府資金を投入したのかということをお聞きいたしたいというように思います。
田村説明員
お答え申し上げます。
今まさに先生がおっしゃられましたように、年金福祉事業団のグリーンピア事業に対します財政投融資は、年金のいわば還元融資の一環といたしまして、平成九年度まで行われてまいりました。平成九年度自体は、実際は、既設の、どうしてもやむを得ない補修金に融資しただけでございますから、実質的には平成八年度までと申し上げて差し支えないと思います。
グリーンピア事業自体は、福祉事業団が建設、管理をしておるわけでございますが、先生御承知のように、運営については県や年金保養協会に委託して独立採算制になっておる、そういう全体の仕組みでございます。
私どもの財政投融資として一番大事なことは、やはり資金法一条にありますように、確実に償還されるという償還確実性という観点を何よりもまず審査の最大点としているところでございます。
この償還確実性自体につきましては、年金福祉事業団自体には収入が発生しない仕組みではございますけれども、資金運用部からの貸付金につきましては、厚生保険特別会計等から、元金は出資金という形で、利息分は交付金という形で償還される仕組みとなっておりますので、運用部から見た償還確実性という面から見ても問題ないということから、これまで、厚生省あるいは年金福祉事業団ともちろんその事業の問題点をいろいろ議論した中でございますけれども、九年度まではそういう形で貸し付けていたということでございます。
谷口委員
要するに、私が申し上げたいのは、普通、経営しておる一般企業であれば経営責任というのがあるわけでございますね。だから、経営破綻したら経営責任をとらなきゃいかぬわけですよ。ところが、今一連ずっとお聞きしましたが、私は、事業団の方ではどなたが責任をとるのかわかりません。これはもう要するに、撤退するということを決めて、一千四百億というお話でございましたから、これは私は、一千四百億の資金を投入して、まあせいぜい数百億入ればいいんだろうと思うのです。一千億を上回るような損が発生する可能性が極めて高い。そういう状況の中で、これはだれが責任をとるのか。
例えば仮に、これはどのくらいの損失になるか私はわかりませんが、大体市場の今の動向等々見ていって、今そういうところから撤退しておる状況を見ると、仮に一千億を上回るような損が発生するとした場合に、それが一つは保険料に転嫁されて保険者に負担を強いることにもなるんだろうと思うし、そのあたりの責任が明確になっておらないと思うわけでございますが、この経営責任と申しますか、こういう経営破綻責任についてお聞きいたしたいというように思います。
先ほどと同じように、雇用促進事業団、簡易保険福祉事業団、年金福祉事業団、三事業団についてお聞きしたいと思います。
渡邊(信)政府委員
雇用促進事業団の福祉施設につきましては、現在国会に提案をしておる法律が成立いたしますと、それから譲渡等を考えていくということでございまして、目下のところは、その譲渡が成立した上でスムーズに進むということを考えております。
足立政府委員
簡易保険の加入者福祉事業につきましても、本体の簡易保険事業そのものと一体となって行っておりますので、それらの経営につきましては、十分配意してやってまいりたいというふうに思っております。
矢野政府委員
責任問題といいますと、例えば厚生大臣とか年金局長が責任をとってやめるとかそういう話になるわけでございますけれども、そういうことで片がつく問題ではないと思っております。私は、撤退という方針が決まったわけでございますので、この撤退を円満に遂行する、きちっと後始末をするというのが私の責任だと考えて今進めておるわけでございます。
谷口委員
何を言っているか全くわからないわけで、そこに、経営責任をだれが持つかという観点がないわけですね。ですから、さっきも申し上げたように、例えば特会の中でがちゃがちゃになっちゃって、だれがどういう形になっているかということもはっきりわからないというような状況になっておるというような現状だと思います。
そうすると、今、どの程度の損失が出た場合にこれを撤退しようというような目安があるのかないのか、ずるずると行って、どの程度まで悪化すると撤退するというような目安があるのかないのか、この辺についてお聞きいたしたいというように思います。
矢野政府委員
私どもが担当していますこのグリーンピアというのは、既に撤退というのが決まっておるわけでございます。これは、赤字だから撤退、黒字だから撤退しないとかいうことじゃなくて、すべてについて撤退をするということで作業を進めております。
足立政府委員
簡易保険の場合でありますが、簡易保険事業の目的、また福祉事業の目的からいたしまして、営利を目的として行っているわけではありません。したがいまして、個々の施設が赤字、黒字であるからということで直ちにそれを廃止する、撤退するといったような判断は難しいというふうに考えますが、事業の経営を行う以上、効率的な運営ということは常に心がけてやっていくべきものでありますので、先生の御指摘も踏まえて取り組んでまいりたいというふうに思っております。
渡邊(信)政府委員
雇用促進事業団の設置しております宿泊型施設の大部分につきましては、現在ほぼ健全な運営ができているかと思います。一部借入金等によって経営の収支を償っているところがございます。ただ、先ほどからも御議論ありますように、大規模修繕等につきましては事業団が直接行うということですから、そういったものを含めますと赤字の経営ということになるかと思いますが、これは、勤労者の施設ということでいろいろと非採算部門を持っている、こういったことで助成をしているわけでございます。
いずれにいたしましても、法律が成立いたしました上は、赤字のところについては経営改善を行いながら、地方自治体等への譲渡を考えたいというふうに考えております。
谷口委員
もう時間が参りましたので終わりたいと思いますが、一つは、冒頭お話をさせていただきましたように、これらの会計書類については統一されたものをまずつくる必要があるというように私は思います。
それで、先ほど答弁にもありましたが、出血しながらずっと経営を維持していくということは、これは極めて重要な問題、重大な事態でございますので、まず、どの程度まで損が出てくると撤退するんだというような、ある程度の目安をやはり設定する必要があるというように申し上げたいと思います。
それと、特別会計は、これはもう今のような状況でやっておると、中身が本当に不透明でわからない。そういう観点で、今後またもろもろの特別会計について、これは審議をし、解明をしていく必要があると申し上げまして、これで終わらせていただきます。
鴨下委員長代理
次に、米津等史君。
米津委員
自由党の米津でございます。午前中の参考人の意見聴取で、岡本参考人が意見を述べられました民間の宿泊施設との共存の考え方、また奥野参考人の、国民に対する説明責任、これの努力不足ということが私にとって大変参考になりましたが、これらの意見を踏まえて、まず労働省にお伺いをしたいと思います。
いろいろ話題になっておりますスパウザ小田原についていろいろと研究させていただきましたけれども、まず、雇用促進事業団の設置の施設が、一つには全国勤労青少年会館、二つが勤労者職業福祉センター、勤労者福祉センター、勤労総合福祉センター、中小企業レクリエーションセンター、勤労者野外活動施設、そして勤労者リフレッシュセンターと非常に多くあって、どう違うのか私は余りよくわからなかったものですから、そこら辺をわかりやすく教えていただきたいのと、またそれぞれの建設の目的とその資金がどこから出たのか、お伺いをしたいと思います。
渡邊(信)政府委員
雇用促進事業団が設置しております施設は約七十くらいございますが、それぞれの目的を持っております。
例えば、小田原のスパウザにつきましては、職業生活が大変長期化もしているというふうなことから、健康づくりとか体力チェックを行う、こういったことを例えば目的にしておりますし、それから多くの施設につきましては、なかなか単独では福祉施設を持つことができない中小企業の共同利用できる福祉施設、こういったことで設置をしているものもございます。また、中野のサンプラザのように、勤労青少年のためにいろいろな職業上の相談に応じたり、あるいは研修する場を設けたり、こういった目的を持ってつくられたものと、いろいろな目的を持って七十くらいの施設が現在つくられておるわけでございます。
米津委員
いろいろ設置目的があって推進なさったと思いますけれども、特にスパウザ小田原等については、現在のところ収支状況、利用状況が大変芳しいのか芳しくないのか、本質的にわからないところがあるものですから、ここの利用者の評判あるいは地元での評判ということについて、より詳しくお話しいただきたいと思います。
七瀬参考人
お答え申し上げます。
現在までのところ、短期滞在者が圧倒的に多いというのが事実でございまして、この点については、長期滞在の環境整備もしていかなければならないと思っております。
その点につきましては、やはり久しぶりにゆっくりリフレッシュができたというような意見、それから民間に比べて若干格安でこういう施設を利用できてよかったというような声があったりいたしております。
もちろん、いい話ばかりではございませんで、サービスの点でもいろいろ指摘を受けていることもございますし、それから、例えば料理なんかについても、実は非常に現実感のある御意見をいろいろいただいたりしているところでございます。
いずれにいたしましても、健康チェック機能を中核とするリフレッシュの中で、健康チェック関係の利用がまだ十分でないということはこれからの大きな課題であろうと思いますし、ともかく皆様方に知っていただいて、そして育てていただくという気持ちで一生懸命頑張っていきたいと思っております。
米津委員
利用促進をすれば民間から民需圧迫と言われ、それなりにやれば赤字になってまた追及されるという八方ふさがりだと思うのですけれども、特に福祉施設の場合は、健康促進といいましても医療施設とはまた違った特色をより打ち出していかなければいけないということで、スパウザ小田原等の福祉施設全体について、医療施設とは違って今後どういうふうに進めていくのか、将来像についてまたお伺いをしたいと思います。
渡邊(信)政府委員
この事業団の設置しております福祉施設については、いろいろと御意見をいただきました。また、行革の中でも大変厳しい意見をいただいているわけであります。
今年度からは新しい施設の新設は取りやめておりますし、現在国会に提案をしております法律におきましては、施設の新設はもう行わないということにいたしまして、譲渡等をするというふうに規定をし、さらに譲渡等ができるまでは新しい法人で管理をするということにしておりまして、法律が通りました上は、できるだけ地方自治体を中心としたところへの譲渡を検討していきたいと思います。
米津委員
次に、厚生省にお伺いをいたしますが、大きな赤字を出している施設、これは先ほど一括して撤退というふうにお話がありましたけれども、個別の施設を具体的にどう処分していくのか。
これについては、地方公共団体等でも大変難しい話だと思います。谷口議員を含めていろいろ御質問がありましたけれども、私は、正直言って全然めどが立たないというふうに思っております。今後、どのようなスケジュールで推進して、いつ見切りをして民間等に売却の方針に転換していくのか、具体的にお話をいただきたいと思います。
矢野政府委員
お答え申し上げます。
都道府県とか地元の市町村、こういった地元自治体に受けていただきたいというのが私どもの第一の希望なんですけれども、今お話ございましたように、地方公共団体も財政的に非常に厳しい、こういう中で、今のところ、引き受けていただけるというようなところはまだ具体的に挙がっていないということでございます。
ただ、これにつきましては、より具体的な価格とか条件を提示することによりまして何とか交渉をまとめて、受けていただきたい、こういうことでこれから努力していきたいと思っております。
ただ、どうしても地元の公共団体で受けていただけない場合はどうするのかということでございますけれども、これも先ほど申し上げましたように、民間を含めて幅広く売却先を探す、こういうことにならざるを得ないと思っております。
その場合に、赤字の施設、ずっと赤字が続いておって立地条件も悪い、これはもう幾ら経営努力してもどうしようもない、実はこういうところもあるわけでございます。こういったところにつきましては、できるだけ早く閉鎖をする、それで民間の売却先を探す、こういうことになろうかと思います。
ただ、黒字施設もあるわけでございまして、非常に利用者も多い、こういったところをいきなり閉鎖してつぶすというのはまことにもったいない話でございまして、こういった黒字の施設、利用者の多い施設につきましては、一定期間運営をする、こういうことも必要じゃないか。一定期間運営をしながらその売却先を探すということも必要じゃないか。ただ、一定期間が過ぎますと、当然それはもう撤退をするわけでございますけれども。
そういった個々の地元の事情に配慮した柔軟なやり方で何とか円満に引き継ぎを図っていく、こういうことが重要じゃなかろうかということで、今申し上げたような考え方に基づいて、今いろいろその手続を進めておるということでございます。
米津委員
私は、社会保険財源を初めとした公的資金による福祉施設については、民間では十分に行えない分野ですから、民間の補完に徹するとともに、最低限の収益確保が図れるものに限るべきだと思いますが、ここら辺についてお考えを伺いたいと思います。
宮島政府委員
社会保険の施設につきましては、被保険者あるいは受給者、その家族の健康保持、増進なり福祉の向上のために、被保険者のニーズなり地元自治体の、地域の要望に応じて順次整備してまいりました。
特に、年金制度につきましては、いわゆる保険料の掛金の期間が四十年を超えるぐらい長い期間にわたりますし、それでもって初めて給付に結びつくというようなこともありますので、制度に対する被保険者の理解、あるいは保険料納付意欲を持っていただくという意味合いもあって施設を整備してきたところでございます。
しかしながら、先生今御指摘のように、非常に社会経済の環境も変化しておりますし、政府管掌健康保険あるいは厚生年金保険等の年金財政も非常に厳しいものになってきております。そういう状況を踏まえまして、社会保険庁におきましては、今後におきましては新しい施設の整備は基本的には行わないという方針にしております。また、既存施設につきましても、利用者の状況なり経営の状況を十分勘案いたしまして、必要な統合整理等を行ってまいりたいというふうに思っております。
米津委員
ぜひ、国民に対する説明責任をより促進をしていただいて、今後、推進していただきたいというふうに考えております。
以上です。
鴨下委員長代理
次に、中林よし子君。
中林委員
先ほども問題になっておりましたけれども、環境庁所管の特殊法人の環境事業団が建設しました岡山県の玉野市と倉敷市にまたがる王子が岳山頂のリゾートホテルの王子アルカディアの問題についてお伺いしたいと思います。
環境庁の方にお伺いしますが、この施設の計画の概要、それから現状、これについて簡単に説明してください。
丸山政府委員
お答え申し上げます。
平成元年三月に、当時の公害防止事業団が、岡山県玉野市などが出資者であります第三セクターの要請によりまして、その事業者からの要請によっていわば受注建築をしたものでございます。
場所は、瀬戸内海国立公園の一部の地域でございますけれども、周辺の倉敷地域、六百数十万人の利用者がございますし、下の渋川海岸、夏はかなりの利用者がございます。そういった立地特性を踏まえて、利用者の集中による環境の悪化を防止するため利用の分散を図るということで設置の計画が出たところでございます。
このリゾートホテルにつきましては、ホテル本体あるいは園地といったような基盤的な施設を環境事業団が整備をし、ホテルの内装等については第三セクターが行うということでございまして、無事に三セクに引き渡したところ、当時の三セクの方で、いわば貸し渋りということで工事が中断し、現状に至っているものでございます。
中林委員
今もう少しこのホテルの規模を説明されるかと思ったのですけれども、当初の計画は、収容最大人数三百九十九人、地上七階、地下二階というような膨大なホテルの構想でしたけれども、現在は工事が中断して、今のところ利子を含めて四十六億二千万円の不良債権化が発覚しているというふうに思うわけですけれども、それは間違いございませんか。
丸山政府委員
地上七階、地下二階建てということは間違いございません。
環境事業団の債権額は、約三十六億円でございます。
中林委員
若干数字のとり方が違うんだと思いますけれども、それにしても大変な不良債権化をしていると思うのですね。なぜこんな事態になってきたのかというそもそもの話が私は必要だというふうに思うのです。
もともとこの計画について、日本共産党は、国の、当時は公害防止事業団と言っていたわけですけれども、国立公園内でみずからリゾート開発に乗り出すことについては厳しく批判してまいりました。
一九九一年、平成三年の九月十七日の環境委員会で我が党の寺前巖衆議院議員が質問をしています。そのときに指摘したのですが、民間業者であれば、自然公園法第十七条に基づいて、「国立公園内における各種行為に関する審査指針」、これによって、自然環境保全の立場から、施設建設には厳しい制限が課せられておったわけです。この審査指針によると、許可される場合でも建築物の高さは十三メートル以下、こういうふうにされているのですが、当時の公害防止事業団が行う場合には、公園利用の観点が優先されまして、王子が岳の場合には、環境庁の出先機関である瀬戸内海国立公園管理事務所が建築物の上限はおおむね二十五メートルとするという「宿舎事業の取扱方針」を決めました。しかし、実際は、さらにそれを上回って、最高二十六・五メートルの計画になったと聞いております。
そもそも、第三セクターの筆頭株主の王子が岳観光開発がこの土地を入手したのは一九六七年で、国立公園内に二十年以上も保有して、いわば遊休地だったわけですね。ところが、八七年五月の公害防止事業団法の改正で、国立・国定公園の一部地域に観光客が集中して公害問題が発生しないよう、ほかの地域に利用者を分散、誘導するためだ、先ほどもそういう説明があったわけですけれども、こういう名目で宿舎などの施設を建設し、それを第三者に譲渡できるということを事業団の業務内容に追加したことによって、この遊休地がにわかに息を吹き返してまいりました。
まさに、国立公園内の民間業者のリゾート開発に環境庁が率先して手をかした、いや、手をかしたということだけではなくして、法律そのものを変え、金を貸し、建物も建てて、丸ごと自然環境を破壊する、とんでもない内容になったというふうに思います。だからこそ、ここに不良債権を生み出してきた根本的な責任、これが問われなければならないというふうに思うわけですけれども、環境庁はどういうふうにお考えでしょうか。
丸山政府委員
環境事業団がいわば受注建築をいたしました施設につきましては、特に環境面の配慮を十全に行うということで、格段の汚水処理施設を整備し、また付近のハッチョウトンボの生息する池を残すということ、加えまして、景観面から高さを抑えて、周囲から見ますと、上層部の一階ないしは二階程度が出ているという程度の高さでございます。
この事業につきましては、昭和六十二年に国立公園・国定公園施設建設事業ということで、環境保全型の利用施設の整備を推進するために創設をされたものでございますけれども、既に経済状況が一段落した平成四年にはこの事業を廃止をいたしておるところでございます。
中林委員
今言われたように、平成四年にこの事業は廃止したとおっしゃいましたよね。これが、やはりこういった事業そのものが、環境庁のいわば所管する特殊法人がやる仕事ではないということの経過、それから考えて、こうした事業はもう廃止するということになったのじゃございませんでしょうか。
だから、事業を廃止したということは、こういった事業を環境事業団が行うことはふさわしくない、こういうことを環境庁もようやく反省したことに私はつながると思うのですけれども、その点の反省はありますか。
丸山政府委員
環境庁といたしましても、リゾートに対する国民一般の方のニードが那辺にあるかということを研究をいたしまして、いわば自然体験あるいは自然教育に資するような施設を整備をしていこう、加えて、いわば安価で手軽に利用できるものにしていこうということで、平成四年の法改正に際しましては、国民宿舎程度の整備を一つのリゾート建設の場合の宿舎の位置づけといたしまして、整備を始めているところでございます。
経済状況等を考えまして、やはり現在におきましては、できるだけ簡素で効率のよいこういったような施設を整備していくということが肝要であろうと考えているところでございます。
中林委員
反省したとは言葉ではおっしゃらないけれども、しかし、こうした大規模なホテルの事業をやるべきでないということから、そうしたものへ転換をされた経緯だったというふうに思います。
実は、読売新聞がかなりこれを追って記事を書いているわけですけれども、こういう指摘をしております。「公害防止事業団がバブルに踊り、そのツケを今に回してきた責任はいったいどうなるのか。だれが見ても、公害対策を目的とする政府の特殊法人が大型リゾートの建設に乗り出すのは尋常なことではない。」こう指摘をして、「環境庁の責任は重い。」と。私もそう思います。だから、国立公園であるわけですし、我が党もこういった計画が出たときに大変な問題だということを指摘をしてまいりました。
しかし、今はそういうことを述べられましたけれども、昨年の平成十年度予算の第三次補正予算で、さっきの同僚議員の質問にも出ておりましたけれども、環境庁は総額九十億円を要求して、二十億円でこのアルカディアのホテルの建物と土地を買い上げて、残り七十億円で内部を改装して、宿泊施設を備えた環境学習施設として利用する方針、そういうことで、当時の計画案を見せていただきました。ホテルの中身をどういうぐあいに変えていくかということで、大変な中身の構想でございました。ところが、自民党やあるいは大蔵省などから、高額な施設を建設するのになぜ玉野市なのか、事業団の不良債権を救済し、同時に環境庁自身の監督責任も免れようとするものではないのかなどの批判が相次いで、これを受けて環境庁は予算案決定直前になって要求を取り下げられました。
ところが、今、息を吹き返してきている。体験的環境学習施設を建設しようということで環境庁が考えている総合環境学習ゾーンというのを発表になっております。これを見ますと、全国四カ所を指定して、その一つに、問題の施設がある瀬戸内海中央地域を選んでおります。「問題の施設を転用したいとの思惑がありありだ。」と読売新聞は指摘をしております。
環境庁はこの施設をどうするつもりなのか、仮に、この施設を取り壊すとするとどのくらいの経費がかかるとお考えなのか、お答えください。
丸山政府委員
環境に優しいライフスタイルを定着をさせて、二十一世紀の新しい社会の担い手を育成するということで、現場体験を重視した環境学習の振興を図るという考え方に基づきまして、今回、平成十年度の第三次補正予算におきまして、全国四地域を総合環境学習ゾーンのモデル事業として選定をいたし、地球温暖化、あるいは化学物質、廃棄物リサイクルあるいは自然学習といったような多様な、現場で取り組む活動を体験していただくといったような事業を開始をしているところでございます。
その四カ所の中で、瀬戸内中央地域ということで、岡山、香川を中心とする備讃地域に広島県を加えた地域がその四カ所のうちの一つとして選定をされていることは事実でございます。これは、そういったいろいろな現場におきますさまざまな環境学習を支援するような学習機材等を提供するのが主な事業の内容でございます。
そこで、この王子アルカディア事業に対してどう対処するのかというお尋ねでございますけれども、この王子アルカディア施設につきましては、現在三セクが所有をしておりまして、その所有者自身がこの施設をどう判断、処理するかということが本来あるべきところでございます。仮にこれを廃棄あるいは撤去いたしますと、かなりの撤去費用、数億円と言っておりますが、撤去費用を要するということもございます。この施設につきましては、周辺地域、大変利用者が多い地域でございますので、地元の市等といたしましては、ぜひこの施設も活用しながら、地域に親しまれるエリアにしていきたいというふうな希望も出ているところでございます。
私どもとしましては、そういった地元における一つの活用の可能性を眺めながら、協力できるところがあればしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
中林委員
私もこれを見に行きました。大変環境のいいところです。ただ、このホテルの建物は幽霊ホテルと地元では呼ばれるほど荒れ果てておりまして、本当に環境を害して、国立公園にふさわしくない状況になっております。
そこで、せっかく投資したのだからということで、それを生かすような方向も考えていると今環境庁の御答弁があったわけですけれども、私は、むしろ自然の状況に返すということが一番安上がりなのではないかというふうに思います。玉野市にしても、あるいは倉敷市にしても、今地方自治の財政は大変です。もうこれ以上負担を重くしてほしくない、こういうことがあります。本当に自然学習と言うのならば、国立公園としての自然そのものを生かしていくということが本来のあり方ではないのか、このように思うわけです。
そこで、会計検査院にお伺いしますけれども、このアルカディアホテルについて会計検査院はどのように対処していらっしゃいますでしょうか。
諸田会計検査院説明員
お答え申し上げます。
会計検査院では、環境庁及び環境事業団の本庁及び本部の実地検査などの機会に、本件事業の経緯、現状、今後の処理方針などについて説明を受けているところでございます。また、昨年、平成十年四月に、岡山県における会計実地検査の際、現地の状況を確認しております。
会計検査院といたしましては、環境事業団が分担した工事は完了し既に施設の譲渡が行われているものの、その後の工事が中断していること、また、割賦譲渡元金及び利息が滞納されていることについては承知しておりますが、現在、環境庁、環境事業団及び地元関係者等が善後策を検討していると聞いておりますので、その推移を見守ってまいりたいというふうに考えております。
中林委員
環境庁に重ねて私は政策の転換を求めたいというふうに思うのですけれども、本来、こういった環境庁の所管している特殊法人であれ、そういうような開発に手をかしていくようなやり方ではなくして、本当に自然を生かして国民に供する、それが環境行政としては責任のとり方だと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
丸山政府委員
この王子アルカディア事業に際しましても、いわば汚水処理等の環境保全対策に万全を尽くし、また、近くにおりますハッチョウトンボの池なども保存をして、一体としての活用を図っていくといったような計画でスタートしたものでございます。リゾート開発につきましては、最近の経済状況で大幅な見直しも求められているところでございます。
本件につきましては、いわばそういった経過を踏まえながら、また同時に、この地域が大変利用者の多い地域であることも否定できないところでございますので、地元の要望、大変この施設の活用をしたいという、幽霊ホテルというイメージを払拭をしたような活用をしたいということを地元でも強く希望しているという報告も受けているところでございます。今しばらくこの活用方策についての推移を見守ってまいりたいと考えているところでございます。
〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
中林委員
私は、むだの上にもむだを重ねて、しかも自然環境を壊すことに、断固として反対したいというふうに思います。
最後に、今度の公的宿泊施設についての会計検査院の報告書にもありますけれども、今、公的宿泊施設の行き過ぎというのは本当に目に余るものがあるというのはもう動かしがたい事実だと思います。この報告書でも述べておりますように、設置、運営の目的だとか、それから設置手続と建設費の問題だとか利用料金の問題、その目的だとか法律に沿ったやり方というのは本当に厳正に求められなければならないというふうに思います。特に、午前中の岡本参考人の指摘にあったように、理念、目的、対象、この基本原則に沿った設置、運営がなされるべきだということを申し上げまして、私の質問を終わります。
原田委員長
次に、保坂展人君。
保坂委員
社会民主党の保坂展人です。
公的宿泊施設の運営に関する本委員会の求めに会計検査院が作成していただいた報告書を何度も読んでみて、ますますわからなくなったというのが正直なところです。
まず厚生省に伺います。
全国国民年金福祉協会連合会という団体がございますが、この団体は、国民年金という枠でありますけれども、宿泊施設を運営する、藤枝エミナース、こまばエミナース、京都エミナース、春日部エミナースと、この四カ所をやっているというふうに理解してよろしいですか。
宮島政府委員
御指摘の四カ所の施設を経営しております。
原田委員長
何て言ったの、聞こえません。
宮島政府委員
今先生御指摘の四カ所の施設を経営しております。
保坂委員
ところが、昨日質問に先立って、こちらの、今の全国国民年金福祉協会連合会の収支資料を持ってきていただいたんですが、これは施設運営の具体の金額がないということで、特別会計ということでなされているというので、後から追加で資料をいただきました。その中にはくまもとエミナースというのもあるんですが、これはどうなっていますか。これは事業収入ゼロ。出費は随分あるようですが。
宮島政府委員
くまもとエミナースは昨年の四月にスタートいたしましたので、まだ事業年度が完結しておりませんのでデータは出ておりません。
保坂委員
そうすると、今の答弁も不完全だったということですね。
先ほど挙げたこちらの会計検査院の最後の一覧表を見てみますと、藤枝エミナースは国民年金健康保養センターであります。こまば、京都は国民年金会館、春日部エミナースは国民年金健康センター。これ、同じエミナースでどうして違うんですか。厚生省。
宮島政府委員
エミナースというのは、そういった施設全体の一応共通の呼び名として使っておりまして、機能別にいいますと先生おっしゃったような区分けになっております。
保坂委員
では会計検査院に伺いますが、この二十六ページのところに、施設種別ごとの運営形態と業務の委託先というふうにありますけれども、今のところを見ると、例えば「国民年金健康保養センター等」と書いてあるんですね。「等」と書いてあって、委託先が、先ほど言った社団法人の全国国民年金福祉協会連合会、その他四十五公益法人とあるんですが、これは甚だ不親切な記載かなと思えます。ですから、これは「等」を取って、それから四十五公益法人ではなくて、それぞれどこがやっているのかをきちっと全部明らかにされたらどうかと思うんですが、当然これは調査のときに把握されていると思うので、後ほど明らかにしていただけるでしょうか。
増田会計検査院説明員
後ほど御説明したいと思います。
保坂委員
文書で出していただきたいと思います。
増田会計検査院説明員
文書で御説明したいと思います。
保坂委員
同じく検査院に伺いますが、この報告書の、これは四十八ページに当たりますが、この中に、施設の運営にかかわる経費、平成八年度の数字が載っております。グリーンピア、大規模年金保養基地だと思いますが、この部分の百二十億円、これは「損益帰属者が実質的に負担した費用」というふうにありますが、この費用の中に年金保養協会が負担した費用は入っているでしょうか、入っていないでしょうか。
増田会計検査院説明員
入っているというぐあいに理解しております。
保坂委員
それでは、このグリーンピアについて、年金福祉事業団から来ていただいていると思うのでちょっと伺いたいんですけれども、そもそもこの年金保養協会というのは四カ所だけ運営に当たるというスタイルをとっていますが、それはなぜそういう形になっているんでしょうか。
森参考人
これは大変経過がございまして、昭和四十七年にこの構想を始めて以来、主としてその構想取りまとめに当たってまいりましたのが協会でございます。その後、計画の進行に合わせまして、都道府県でもみずからが計画を立て、地域の実情に合うような計画を立てて実施することが効率的ではないかということが考慮された上で、最初にスタートいたしました四基地分、これを協会が運営することにいたし、その後の九基地につきましてそれぞれ都道府県に運営を委託したという経緯でございます。
保坂委員
そうすると、この年金保養協会の役割なんですが、いただいた資料を見ると、その四カ所を運営するのみならず、共同会計という器を持っていて、それぞれのグリーンピアから上がってくる百万円プラス収入の三%というものを収入源にしながらいろいろと共同の事業に当たっている。これはどういう根拠に基づいて、一体何を共同でやっているのか、お答えいただきたいと思います。
森参考人
突然のお尋ねで詳細は承知いたしませんが、十三基地をなべてお互いに情報を交換することがございます。運営についてのノウハウの交換でありますとか、あるいはお集まりになる、御利用になられる皆さんの特性を掌握するとか、そういうような共同事業がございますものですから、それを取り仕切る、その中心になって行うという役割を持っているものでございます。
保坂委員
そうしますと、きょうの質疑で明らかになったように、土地も建物も自前ではありません。それから、古くなってきたら、これは特別会計で修繕や改築、増築なども行われる。いわば運営そのもののランニングだけで、かなり経営環境としてはもう民間とも全然比べ物にならないくらい恵まれているわけですが、にもかかわらず、年金保養協会は平成六年度で六千万、七年度で二億四千万、八年度で一億という赤を出しているということなんですが、直近ではこの赤字はどうなっているでしょうか。そして、その赤字はどうやって補てんをされるのか。お答えできる範囲で結構です、突然ですから。
森参考人
直近の赤字は、今手元に持ち合わせておりませんが、恐らく先生おっしゃるようなことがあろうかと思います。これは四施設のそれぞれの各年度におきます営業実績によるものだろうと思っております。
これは独立採算でございますものですから、その仕組みの中でその運営に要した経費を何とか賄って、何とかそれを補てんしていくということでございまして、その経営をうまくいくように私どもも側面からいろいろな形で指導をしているというのが実態でございます。
保坂委員
では、再び伺いますが、例えば理事長は非常勤で八百万円、あるいは常勤専務理事クラスで二千万というような報酬だということが少し前の新聞に出ておりますが、グリーンピアそのものの問題が大きくなりましたので、この待遇は現在はかなり変わっていますか、それともそのままでしょうか。
森参考人
当該法人の理事会でいろいろ御議論があり、恐らくそのレベルではなくなっていると承知をいたしております。かなり切り詰めた運営に入っていると思います。
保坂委員
会計検査院に再び伺いたいんですが、これを読んでいてさっぱりわからないのは、結局、この場合だと年金福祉事業団ですね、そのものの経理はわかっても、今お聞きをしてきた協会の方、そこからまた業務委託を受けた財団法人年金保養協会の内容は、会計検査院は把握できない。これはいろいろ調べると、さらに孫請がありまして、財団法人年金保養協会がさらに、例えばグリーンピアサービスという会社をつくっていたり、兵庫年金保養サービス、こういうものをつくっているわけですね。このあたりは把握できないんですね、会計検査院。
増田会計検査院説明員
今回の報告におきましては、主に国の特別会計の負担というような観点から検査を行いましたが、運営を受託した公益法人の施設運営に係る収支や損益、そういったものにつきましても、関係省庁や事業団の協力を得てその概要を示しているところでございます。
ただ、公益法人の経理実態そのものにつきましては、これを明らかにすることは、会計検査院といたしましては検査権限上の制約もございますので、まず各省庁等において適切な対応をしていただきたい、このように考えております。
保坂委員
委員長、お聞きのように、保険金であるとか、あるいは郵便貯金の運用であるとか、国民の大切なお金が施設建設に使われ、そしてその部分が、検査院がチェックしようとしても、いわば財団だとか社団だとかその後の株式会社、どうもよくわからない。
ここは委員長にぜひお願いしたいのですけれども、公的宿泊施設の運営を委託されている、ですから孫請、さらにそのひ孫請まで含めて経理内容を当委員会に、検査院も、この事業団、厚生省、労働省管轄、ここで問題になってきた公的宿泊施設の、すべて似たようなスタイルがあると思うので、その経理内容をすべて委員会に出していただきたい、できれば発足してから現在までの経理内容をというお願いが一つ。
もう一つは、それに附属するのですが、役員構成ですね。それぞれの法人の理事長であるとか役員がどういう省庁から天下ってこられたのか、あるいは自治体から来られたのか。これも発足当初からの役員表を、一覧を当委員会のもとにお出しいただくように、委員長に求めたいと思います。
原田委員長
今の保坂君の御提案は、理事会において検討いたします。
保坂委員
ぜひお願いしたいのです。
では厚生省、最後に聞きますけれども、こういった、経理内容がよくわからない、全体の大まかな数字は出てくるけれども、先ほどの協会にしても、その協会がつくった会社にしても、非常に不透明だと再三指摘されていますが、このことを情報公開、透明化するために、最大限、迅速にこの情報を出すかどうか。出すようにしたいというふうにぜひ言ってください。
宮島政府委員
平成十年九月に総務庁の勧告によりまして、社会福祉施設、社会保険の関係施設で、事業主なりあるいは被保険者から拠出された保険料財源をもとに設置されている国有財産でありますから、これらの施設に係る収支状況や利用状況等の情報を一般の閲覧に供すべきとの勧告を受けておりますので、私どもとしても、この勧告の趣旨を踏まえまして、各施設ごとの情報公開を行うこととしております。
特に、公益法人に対する指導監督基準に準じまして、平成十年度以降の事業年度から、業務及び財務等に関する資料を、経営を受託する法人の主たる事務所に備え置き、原則として一般の閲覧に供するという情報公開を行う予定にしております。
保坂委員
いろいろとお願いをしましたけれども、この問題は、真実がどうあるのかということが明らかにならない限り、アイデアも方向も出てこないと思いますので、重ねて委員長にお願いをして、私の質疑を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
原田委員長
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後三時三分散会